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《羽蛾》 キャラクターカード あなたのフィールド、手札、デッキのモンスターはすべて昆虫族になる。 あなたは「インセクト女王」を生け贄なしで召喚することができる。 あなたの「進化の繭」の効果のターンカウントは、自分のターン中で数えずに相手のターンもカウントに含める。 あなたは自分のターンのスタンバイ・フェイズ毎に500ポイントのライフを失う。 Part13-672 名前 コメント
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【婆娑羅の巣窟】 吸血大蛾 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (吸血大蛾.JPG) レベル:数 無法者たち 富豪ぎらい LV44〜46:1〜3体 かぶき者道楽Lv55:3 構成 名前 種類 レベル 初期付与 使用技 吸血大蛾 蛾 猛突進・壱〜参、極、超音波、鱗粉飛散 すす色虫 蜘蛛 噛み破り・弐、渾身撃、毒針、全体喝破、詠唱の韻・極、完全回復、防御 備考 鱗粉飛散はレジスト可能な全体麻痺技能。痺れ時間が金縛りなどより若干長い。 (無法者たちのものは抗術もちの可能性大。また、回避高し) ドロップアイテム 情報募集中 名前 コメント
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←迷惑ロボ2号 マリサ→ 蛾王 ■性別:男 ■攻撃力:0 ■防御力:20 ■体力:10 ■精神力:0 ■理性:0 ■所持プリン:+3 ■特殊能力名 殺す ■特殊能力内容 [発動率21% 成功率100%] 効果:即死 範囲:同マス任意一名 時間:一瞬 制約:制約なし 調整:シンプルボーナス 本当に殺す。試合中だろうがなんだろうが殺す。
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アヴォ アウルヴァンディルの別名。 「弓使い」の意。
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BIOHAZARD 6 クリス編:part64-33~35,71~79,190~197 33 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/11/08(木) 22 32 17.95 ID lKYL3JHR0 【クリス編】 CHAPTER 1 2013年6月29日、東欧某国。 男が、酒に溺れていた。年齢は中年か。隆々とした体躯と体中に残った傷跡。まさに歴戦の勇士の体であった。 そんな男が、明らかに荒れた様子で呑んでいた。暗く、そして危険な空気を漂わせて。 客は誰も近づかない。店の雰囲気も暗くなっていた。店も客も、明らかに迷惑していたが、男はそれでも酒を呑んでいた。 ついには、バーテンの女性に絡み、客の一人と乱闘を始めた。男は荒れに荒れて、落ちるところまで落ちていた。 青年が、男の乱暴を止めた。近寄りがたい雰囲気で呑んでいた男の隣にわざわざ座ってステーキを食べていた青年だ。 彼は【ピアーズ・ニヴァンス】と名乗り、男に【クリス・レッドフィールド】と呼びかける。 ピアーズは、クリスのことを半年間も探し回って、ようやく見つけ出したのだという。 だが、クリスにはピアーズと面識がなかった。いや、思い出せなかった。彼は半年前に記憶喪失に陥っていたのだ。 ピアーズは携帯端末を取り出し、写真を見せた。彼らが半年前に共に戦った任務の写真だった。 ほかにも、たくさんの男たちが彼らのチームだった。ピアーズは端末で仲間たちの写真を表示し、クリスに突きつける。 「事実から目を背けることは許されない、あんたは過去と向かい合うべきだ。 見ろ、見るんだ! みんなあんたにすべてを託して死んでいった仲間だ! そうやって目を背けて、なかったことにする気かよ!」 ピアーズの熱弁もむなしく、クリスはなにも思い出せない。しかし、ひとつだけ、クリスの頭を刺激するものがあった。 ピアーズのジャケットの肩に縫い付けられた、【B.S.A.A.】のエンブレム。 「そうだ。あんたの帰るべきところだ。みんなが待ってる。あんたを迎えに来たんだ、隊長」 ピアーズはそう言った。ほかにも数人の男たちが、クリスの傍に集まってきた。彼らは、クリスを慕う部下たちだった。 (俺は何から逃げていた? その答えを知らなければ、永遠に前に進めない……。) 記憶は相変わらず蘇らない。だがクリスは、この男たちの隊長として、再び戦場に立つことにした。 そこに、自分の失われた記憶が、自分の人生の意味があると信じて……。 翌6月30日。中国、偉葉(ワイイプ)。生物兵器【ジュアヴォ】を用いたテロ事件が発生。B.S.A.A.が鎮圧に向かう。 テロ組織は、国連職員数名を拉致し、とある雑居ビルに監禁しているらしい。その救出が、彼らの任務だ。 クリスは、アルファチームのリーダーとして戦うことになった。その隣には、ピアーズが従っている。 到着したクリスらを真っ先に出迎えたのは、カメラマンとリポーターだった。それらを押しのけて、クリスらは進む。 奇妙な仮面(京劇に使うものだろうか?)を被ったテロリストと遭遇。なんと、頭に銃弾を受けても活動している。 「ジュアヴォと遭遇! イドニア内戦時と同じ特徴を確認した!」 ピアーズがH.Q.(ヘッド・クォーター=本部)に報告するのが聞こえた。 ジュアヴォとは、人間同様の思考能力と武器活用などの応用力があるB.O.W.だ。さらに変異する性質も秘めている。 彼らは人に見えるが、もう人ではない。無抵抗の市民にも容赦がない、恐るべきバイオ兵器へと堕ちてしまった存在だ。 ジュアヴォは武装していた。ロケットランチャーを取り出して、B.S.A.A.のヘリを墜落させる者までいた。 それらと戦うクリス。記憶はまだなくとも、身体で覚えた戦いのカンは鈍っていないらしく、快進撃を続ける。 別チームの一人が、ジュアヴォに首を絞められているのに遭遇。ピアーズは細く息を吐いて、狙いを定めた。 見事、ジュアヴォの肘関節に命中。ピアーズは狙撃を最も得意としており、その腕は天才的である。 するとそのジュアヴォの腕が、急激に変異を始める。これが、ガナードやマジニと決定的に異なる特徴だ。 驚異的な再生能力により、ダメージをきっかけとしてより怪物的でより強力な特徴を備えた個体へと変異を遂げるのだ。 敵の反撃によって、部下の隊員が一人死亡した。その姿を見て、クリスの記憶の断片がフラッシュバックする。 一瞬、それに気をとられたクリスだが、ピアーズに肩を叩かれて我に返った。考えにふける時間はない。 クリスは任務に集中し直し、素早くチームに指示を出す。迷いはなく、内容も的確だ。 目標地点の雑居ビルにたどり着いた。だがチームの消耗が激しい。突入前に、他チームの到着を待つことにする。 ワラワラと湧いてくるジュアヴォたちを殲滅し、無事合流を果たしてビル内に突入した。 H.Q.の指示に従い、7Fへ。下半身全体が変異し、まるでクモかゴキブリのように走り回るジュアヴォが登場、 人質をがっちり抱きかかえてあっちこっちに逃げ回る。人質を傷つけないよう注意しつつ攻撃、救出に成功。 続いては1F。人質周辺の敵を一気になぎ倒し、安全を確保。……したと思った次の瞬間。 人質の背後に突然ジュアヴォが登場、刃物で人質の喉を切り裂こうとしている。 脳内物質による錯覚か、クリスには周辺の風景がスローモーションに見えた。狙いを定め、ジュアヴォを撃ち抜く。 他チームのメンバーからも続々と人質救出の連絡が入る。どうやら全員の救出に成功したようだ。 あとは脱出するだけだ。すべてのメンバーが脱出したら、汚染拡大を防ぐため、このビルは爆撃される。 だがあと一歩で脱出というところでビルが崩れ、クリスとピアーズだけが中に取り残されてしまった。 H.Q.に急いで連絡を取るが、もう爆撃は始まってしまった、とのこと。 「マズいな 仲間の爆撃で殉職なんてゴメンだぜ」 3Fまで戻り、バルコニーから外へ飛び出した。次の瞬間、ミサイルが着弾し、爆発。間一髪だった。 爆発と崩落が収まってから、クリスらは雑居ビルの跡地を確認しに向かった。 残骸の中には、ジュアヴォたちの成れの果てと思われる、黒粘土の人形のような物体がゴロゴロしていた。 その“サナギ”をみて、フラッシュバックと頭痛に襲われるクリス。半年前の記憶が、蘇る……。 71 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/11/16(金) 12 03 10.26 ID mIDdPHBW0 【クリス編】 CHAPTER 2 半年前、2012年12月24日。東欧、イドニア共和国。 クリスは、B.S.A.A.アルファチーム隊長として、バイオ兵器を用いている反政府ゲリラたちの鎮圧に来ていた。 複雑な内政事情により内戦が絶えないこの国は、まさにテロ組織が隠れ潜むのにぴったりの土地である。 部下の一人が、殉職した。敵の情報を持ち帰ってくるのに無茶をしたらしい。 「B.S.A.A.の使命は、バイオテロを根絶することだ。俺たちは捨て駒じゃない」 「大切なのはおまえたちが生き残り、同志を増やしていくことだ。ここにいるひとりひとりが希望だ」 クリスとピアーズは、部下たちにそう語った。 部下が命を賭けて入手した情報を確認した。反政府ゲリラたちは新型のB.O.W.ジュアヴォを用いているらしい。 ゲリラがそれを開発したわけがないだろうから、その背後に何らかのバイオテロ組織がいることは明白だ。 気を引き締めて任務にかかるよう、クリスは発破をかけた。 落ち着かない様子の部下に、クリスは声をかけた。彼の名は【フィン】。今回が初陣らしい。 「いいかフィン、俺たちは家族だ。家族を信じろ」 クリスは、フィンの肩を叩いて微笑んだ。 移動中、さっそく敵部隊と遭遇。すぐさま市街戦に突入した。 思い思いの服装と武器を手にしたゲリラたちとしばらく戦ううちに、ピアーズがあることに気づいた。 「弾を少しも恐れちゃいない…… 普通じゃないですよ、こいつら!」 クリスも同じことを感じていた。一見普通の人間に見えるが、どこかが違う。これがジュアヴォか。 作戦通りに着実に進んでいくアルファチーム。その道中に、驚異的な巨体のB.O.W.が登場した。 頭は建物の屋根よりさらに高く、その手足は大型トラックがミニカーに見えるほどに大きい。 現地の言葉で「巨人」を意味する【オグロマン】という名のB.O.W.であった。 「規格外もいいところだ! 新種のオンパレードだな!」 巨体にふさわしいタフさで、しとめ切れず逃げられる。そのついでに道を崩されて、遠回りを強いられた。 「あんな新種、報告されてませんよ!」「新しく投入されたんだろう」 ピアーズの疑問に、クリスが答える。どう考えても、ただの反政府ゲリラではない。 さらに進んでいく。が、B.S.A.A.の装甲車が地雷を踏んで走行不能になってしまった。 対戦車地雷まで出てくると、テロというよりもはや戦争だ。戦いはどんどん激しくなっていく。 徒歩で進んでいくが、ルート上で列車が横転している。……そう都合よく? 明らかに、足止めするワナ。 案の定、ジュアヴォたちがワラワラと湧いてくる。工兵フィンに爆破準備させ、他の隊員たちで応戦した。 線路沿いに進んでいくと、鉄橋に到着。ブラヴォーチームの負傷兵が1名、橋に取り残されているのが見えた。 さらに奥には、ぱっと見は旧型だが相当改造されているらしい戦車。さらに奥はバリケードで封鎖されている。 ブラヴォーチームと合流、正面と側面の二手に別れて攻略することにした。 狙撃の名手であるピアーズは側面部隊のほうが向いているだろう。クリスはそちらへピアーズを送った。 フィンが先行、クリスもそれを追う。だが、足を踏み入れたとたん、橋が爆破された。 崩れそうな橋にしがみつき、這い登るクリス。フィンに引き上げてもらって、なんとか命拾いした。 戦車とまともに遣り合っては勝ち目はない。ピアーズになにか有効な目標はないか聞いてみる。 彼はタンクローリーを発見し、狙撃。爆破、炎上。戦車と周辺のジュアヴォは巻き込まれて灰になった。 クリスとピアーズは合流し、橋の上部を確保。しかし敵はさらに増援を送ってくる。 フィンに負傷兵の様子を聞くが、足をやられていて動けないらしい。 「隊長! 私たちにはかまわず、先に行ってください!」 「部下を見捨てて逃げるような真似はしないさ、ここで待っててやる、引きずってでも連れて来い!」 ワラワラとわいてくるジュアヴォを必死に防ぐが、倒しても倒してもキリがない。装甲砲台まで出てきた。 だがフィンも新人ながらなかなか骨がある。負傷者を担いで、クリスらの下へしっかり合流した。 その彼に、橋を爆破するよう指示するクリス。フィンは絶妙なタイミングで爆破し、装甲砲台を下へ落とした。 これで追われる危険は大きく減少した。クリスらはやっと橋から撤収した。 負傷者をブラヴォーチームに任せて、アルファは作戦を継続することに。すると、予期せぬ客と遭遇した。 まだ若い男女の二人連れで、女性のほうが「合衆国エージェント、【シェリー・バーキン】」と名乗った。 「シェリー? ラクーン・シティ事件の? クレアから聞いている。妹が世話になっているな」 クリスは、初対面ながらも縁深い相手との出会いに、顔を綻ばせた。 「クリス、後ろのヤツは反政府ゲリラです」 ピアーズが目ざとく見つけ、クリスに報告した。 シェリーは慌てて、彼は故あって自分が保護した人物で、生粋のゲリラではなく傭兵である、と弁護する。 だが青年、「カネ次第で怪物とだって隊列組むぜ」と不謹慎な冗談を吐き、ピアーズはそれにカチンと来る。 一触即発になったが、喧嘩が始まる前に、ゲリラとの戦闘が始まった。 上空に謎のヘリが登場し、それがぶら下げていたB.O.W.を投下したのだ。超巨大な怪物、オグロマンである。 「安全なところへ下がっていろ!」 「いいえ、戦わせて! もう……守られる立場は卒業したの!」 クリスの心配をよそに、シェリーは協力することを提案。クリスもそれを快く受け入れた。 B.S.A.A.エコーチームが増援に駆けつけているが、敵組織の高射砲が邪魔でヘリが近づくことができない。 B.O.W.の相手をしながら高射砲を破壊する、二面作戦が必要になる。 工兵であるフィンが、高射砲に爆薬を仕掛ける。その間、クリスらは援護に徹した。 オグロマンを撃破するが、2体目が登場。さっき逃がしたヤツだ。 時間が経ったからか、むき出しだった背中の弱点が中に引っ込んでしまい、金属のパーツがちょこんと見えるだけになっている。 ある程度ダメージを与えた後、ビルの屋上から背中へと飛び移り、力任せに引き抜く。ヘリからの爆撃で、怪物は絶命した。 無事エコーと合流できた。クリスはヘリコプター部隊に、シェリーらを本国へ連れて帰るように指示を出した。 歩み去ろうとする青年……【ジェイク・ミューラー】に、クリスが声をかけた。「……どこかで会ったか?」 ジェイクは一瞬ためらってから、減らず口を叩いた。「B.S.A.A.のアホ面どもの見分けなんかつくか」 「テメェ、いい加減に!」ピアーズが激高するが、クリスが止めた。 「逃がしてよかったんですか? あいつら傭兵にやられた仲間だってたくさんいるんですよ!」 アツくなってクリスにつっかかるピアーズ。だがクリスは冷静にそれをなだめた。 「俺たちは戦争に来たんじゃない。B.S.A.A.の使命はバイオテロと戦うことだ。それを忘れるな」 シェリーらと別れ、アルファチームは目標であった庁舎内部へ突入した。 敵の大部隊がいるかと思いきや、誰もいない。代わりに、人型の奇妙なオブジェが立ち並んでいた。 「これ… ヒトですか?」 「生体反応アリだ、まるで“サナギ”だな」 不気味な展開に戸惑いながらも、B.S.A.A.隊員は調査を進める。 部隊を分けて探索を進めるよう指示するクリス。ピアーズとフィンとで、奥を調べることにする。 すると、生存者らしき人影が見えたので、追う。青いドレスに整った黒の短髪という、場違いな格好の女性に見えた。 オフィスらしき部屋に着いた。それを見計らったように、そこにあった“サナギ”が、突如変異を遂げた。 甲殻類のような体表に身を包んだ重量級B.O.W.【】である。非常にタフで、排除するのは骨が折れた。 庁舎奥へと進む。そこには、大量のクスリのアンプルが散らばっていた。 「【C-ウィルス】……反政府ゲリラはそう呼んでいたわ」 アンプルに気をとられた3人の隙を着くように、女性が話し掛けてきた。青いドレス、黒の短髪のアジア人女性。 「【エイダ・ウォン】。ここの職員よ、捕まっていたの。……保護してもらえないのかしら?」 銃を突き付けられた女性は、余裕ある態度を崩さずにそう言った。クリスらは当然、それだけでは疑いは解かない。 女性は薄く笑いを浮かべると、ある情報を口にした。 「【ネオアンブレラ】。反政府組織に協力していた組織がいたの。確かそいつらがそう名乗っていたわ」 エイダと名乗る女性は、テロリスト一味ではないようだが、妙に余裕たっぷりな態度が気になる。 クリスは、女性を保護するようフィンに指示したが、同時に警戒は解かないようにとピアーズに耳打ちをした。 ホールに戻る。エイダの案内で直通の近道を通った。と、ホールにあったサナギがすべて孵っている。 チーム全員と合流してこちらの数も増えているが、それ以上にサナギから出てきたB.O.W.の数が多い。 こいつらを掻き分けて正面から退出するは不可能と判断し、上階へと逃げることにする。 庁舎の中はサナギだらけで、行けども行けどもB.O.W.に遭遇する。だが数は少なくなっており、対処しやすい。 チームは一丸となって出口へと向かった。あと少しで脱出できそうだ。 ……そのとき、ピアーズがふとあることに気がついた。慌てて周囲を見渡す。そして叫んだ。 「さっきの女がいない!」 そして、ワナが作動した。前を走っていたクリスとピアーズは運よく逃れたが、他全員が鉄格子に閉じ込められる。 「エスコートしてくれてありがとう。お礼にイイモノあげるわ」 ワナを作動させた張本人であるエイダ・ウォンが、やはり余裕のある勝ち誇った声で言った。そしてあるモノを投げる。 野球のボールほどの大きさで、無数に針が仕込まれた装置。それは、B.S.A.A.メンバーたちの真ん中で炸裂した。 無数の針が隊員たちへと突き刺さる。針には、C-ウィルスが仕込まれていた。 クリスは鉄格子を叩いた。開かないとわかっても、しがみついて必死に叫んだ。 しかしクリスの呼びかけもむなしく、クリスの目の前で、部下たちはC-ウィルスでサナギと化してしまった。 鉄格子が開き、サナギのひとつが羽化する。絶望に呆然とするクリスは、殴り飛ばされ、後頭部を強打してしまった。 クリスの意識は薄れていく。視界は闇に覆われ、音もかすれていく。 だが意識を失う寸前まで、クリスの視界から、変わり果てた部下たちの姿が消えることはなかった……。 76 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/11/16(金) 13 12 07.58 ID mIDdPHBW0 【クリス編】 CHAPTER 3 ……回想は終わり、場面は2013年6月30日のワイイプへと戻る。 B.S.A.A.の火炎放射隊が、雑居ビル残骸で発見されたサナギを丁寧に焼却していた。 その姿を眺めながら、クリスは低く冷たい声でピアーズに質問した。「エイダ・ウォンはどうしている?」と。 「記憶が戻ってるんですか?」 ピアーズは驚き、説明を始めた。「あの女は、ネオアンブレラと関係していて……」 「この街にいるかいないのかどっちだ!?」 遮るように、クリスが怒声を上げた。余計な情報は要らない。 「……目撃情報あり。この街にいます、絶対に」 その気持ちを察して、ピアーズは端的に答えた。 クリスはすぐさま、今後の指揮をすべて自分が執ると宣言。他チームも含めた部隊再編をすばやく指示した。 負傷者の保護やこのビル跡地の処理にあたるチームを作り、残りの活動できる戦力はすべて追跡チームとした。 目標はたたひとつ。部下の仇である憎きテロリスト、エイダ・ウォンの追跡・捕獲である。 早速移動を開始する、と、廃墟の地下から、ヘビ状のB.O.W.がヌルリと登場したのに遭遇した。 どういう仕組みか、いわゆる光学迷彩の原理で、周辺の光景と同化して透明になる能力を持っているらしい。 B.O.W.あるところにテロリストあり。このB.O.W.を追跡すれば、エイダの元に辿り着くであろう。 追跡の最中、部下が食らいつかれ、そのまま連れ去られた。再び部下の命が奪われたことに、ますます激昂するクリス。 公園を抜けて、雑居ビルへ。大都会の裏通りのゴミゴミした集落を超えていく。 すると、街を彷徨っているシェリーとジェイクを発見した。 「あいつら生きていたのか! イドニアから半年、行方がわからなくなっていたんです」 とピアーズが、ここ半年の情勢を知らないクリスに説明した。そこに、重装甲の武装ヘリが登場する。 さらにはジュアヴォたちがワラワラと湧き出し、シェリーらを包囲する輪を作った。 「あいつら、ネオアンブレラに追われていたのか!」 ピアーズが、謎が解けた、という感じで叫んだ。 「よし、怪物どもを大掃除するぞ」 クリスはそう決断し、部隊に攻撃を命じた。 B.S.A.A.アルファチームは彼らを援護し、武装ヘリとジュアヴォに攻撃を仕掛ける。 シェリーらを安全なルートに誘導しようと通信兵が呼びかけるが、通信機器が壊れているのか無視しているのか、 二人からの返事はなく、誘導することは不可能。その場に留まる二人をとにかく守る形での戦闘になった。 今回のジュアヴォは、腰から下が完全に変異し、バッタの足のようになった姿をしていた。 すさまじい跳躍力でビルを飛び越え、高い安定性で武装ヘリの上に着地して銃撃をしてくる。恐ろしい生物兵器だ。 だがB.S.A.A.も歴戦、身体能力で劣っていてもそう負けはしない。ジュアヴォを殲滅、ヘリも撃墜した。 ジェイクと目が合うクリス。だが、お互い言葉を交わすことはなかった。立ち去っていくシェリーとジェイク。 「あの二人を保護しましょう! アイツらだけじゃ危険です!」 ピアーズが提案した。 「……放っておけ 行くぞ」 しかしクリスは冷たく却下。彼の目には、エイダの追跡しか映っていないかのようだ。 人命を何より大事にしていたクリスのものとは考えられない命令だ。驚いたピアーズは、珍しく反対した。 「隊長、行かせちゃダメです! ネオアンブレラに追われてるんですよ!?」 「俺たちの目的はB.O.W.の殲滅だ! 何度も言わせるな! エイダ・ウォンの居場所を突き止める!」 「……隊長、お願いだ、冷静になってくれ……」 ピアーズの願いもむなしく、クリスは聞く耳を持たなかった。 先へ進むアルファチーム。廃墟付近でB.O.W.に連れ去られた部下の死体を見つける。ひどい有様だった。 クリスの頭に、ますます血が昇った。ピアーズの反対も無視して、廃ビルへの強行突入を指示する。 だが、立体的な構造で隠れるところも多い建築物は、ヘビ型B.O.W.にとっては格好の狩場だ。 通風孔から、天井裏から、窓から、突然飛び出してきては、隊員が一人ずつ襲われ、殺されていく。 クリスは完全に逆上している。ヘビの気配を感じ、そちらへ一目散に突っ込んでいった。 チームワークを省みない、明らかな暴走だ。返り討ちに遭いそうになり、ピアーズに救われた。 「ひとりで突っ走るなんて、なに考えてるんだ!?」 ついにピアーズは我慢の限界に達し、クリスに噛み付いた。 「決めるのは俺だ、ついてこれないヤツは切り捨てていくぞ」 だがクリスも、方針を曲げる気はない。 チームに険悪な雰囲気が漂う。そんな中でも、一人また一人と隊員たちは命を散らしていく。 ビル内でB.O.W.と戦闘、弱らせて裏路地へ追いやった。 そこでB.O.W.は、透明化を解除し、表面を硬質化して防御を固める戦術に切り替えてきた。銃弾は通用しない。 クリスらは、ビルの電源を使って電撃を浴びせる作戦を実行し、ついに仕留めることができた。 B.O.W.を仕留めたが、しかしそれは小目標に過ぎない。クリスは、既に二人しかいなくなった部下に告げる。 「エイダがまだだ。あいつを片付けない限り、何も終わりじゃない」 まだ冷静になりきれていないクリスに、ピアーズはなおも慎重策を提案する。だが、その台詞をさえぎるように、 「私を探しているのかしら?」 妖艶な女性の声が響いた。忘れもしないこの声。青のドレス。間違いない、エイダ・ウォンだ。 だが、銃を構える暇もなく、エイダの放ったウィルス弾が、最後の部下、マルコに命中した。 見慣れてしまった、もう見たくなかった、あの変異が起こってしまう。マルコは、怪物になってしまった。 エイダはさっさと逃げてしまった。クリスらは、部下であった怪物と戦わねばならない。 エイダへの怒りをますますたぎらせるクリスだが、半年前のトラウマが蘇り、銃を構えることをためらう。 「こうなったらもう殺すしかない。俺たちが仲間としてコイツにできることは、もう……」 ピアーズが、戦うことを促す。クリスも覚悟を決めて、マルコを、いや、B.O.W.を、射殺した。 B.O.W.の死体から、C4爆弾が転がり落ちた。マルコは工兵で、爆発物担当だったのだ。 その忘れ形見を拾い上げ、クリスはそれを鍵のかかった鉄格子に叩き付けるようにして設置。道を作り、進んだ。 完全に頭に血が上っているクリスを見て、ピアーズは落ち着くように言った。 「おまえはここまでされてなんとも思わないのか!」 クリスはなおも興奮してピアーズにも噛み付く。 しかしピアーズは反論した。今のクリスは、明らかに復讐に取り憑かれ、正気を失っている。 「B.S.A.A.の使命なんかどうでもよくなってるんだろ!? 今のアンタの姿を、フィンたちに見せられるのかよ!」 その指摘にクリスは顔色を変える。しかし、大切な部下を、自分の記憶を、奪ったエイダへの怒りは収まらない。 売り言葉に買い言葉の勢いもあって、気に入らなければ着いてこなければいい、一人でも進む、とクリスは宣言した。 しかしピアーズはあくまで共に行動すると言った。「今のアンタは危なっかしすぎる」と。 H.Q.と情報をやり取りした結果、スラムを抜けて、南の港湾方面へ向かうことにした二人。 道中、ジュアヴォ編隊に襲われつつも、それしきで足止めされるほどヤワではない。突破して進んでいく。 むしろ防御網にぶつかるたびに、目指す標的に近づいているという確信が深まり、足取りは力強くなっていく。 ボートに乗り込むエイダを肉眼で確認。ここで捕らえる、と思ったが、そこに武装ヘリが登場した。 やむなく追跡を中断し、港の高級レストランに逃げ込んで応戦。見事、武装ヘリの撃墜に成功した。 だが、エイダには逃げられた。H.Q.にエイダの逃走先を確認。どうやら近くに研究所があるらしい。そちらへ向かう。 到着すると、ちょうどドアをくぐるエイダを発見した。誰かと話している最中なのか、ドアの中に気をとられている様子だ。 反射的に発砲するクリス。だが命中しなかった。エイダはフックショットですばやく脱出した。 「逃がすか……!」 クリスは低く呟き、すぐさま追跡。 いかにも研究所然としたエリアに踏み込む。案の定、侵入者を阻む仕掛けが満載であった。 「よく来たわね。ここは私のお気に入りの場所…… せっかくだから楽しんでいって?」 エイダが姿を見せ、挑発した。 仕掛けを解除し、追いかける。部屋に閉じ込められて新兵器の実験台にされたりもしたが、突破して追いかけた。 そしてクリスとピアーズで挟み撃ちにし、角に追いやった。ついに、ついに追い詰めた。 しかし、クリスの背後から、何者かが妨害に入ってくる。不意を突かれたものの、クリスはしっかりと応戦した。 乱闘の末、銃を突きつけあう二人。お互いの顔を見つめあい……そして、気づく。 「……クリス?」「……レオンか!」 そう、彼らはDSOの【レオン・S・ケネディ】と、その同僚の【ヘレナ・ハーパー】だった。 「彼女を殺させるわけにはいかない、彼女はテロの重要証人だ」 レオンが言った。 「証人? 彼女はテロの首謀者だ!」 クリスが反論し、「違う、首謀者はシモンズだ!」 またレオンが言い返す。 「俺たちは、部下を皆殺しにされた!」「俺たちは、アメリカ大統領と市民7万人を失った!」 お互い、一歩も譲らない。 「ネオアンブレラだぞ? この名前が俺たちにどういう意味を持つのか……!」 「わかってる!」 「どうあってもこの女を信じるというのか?」 「……信じる」 クリスの問いに、レオンは明確に答えた。 そうこうしている隙に、エイダは閃光手榴弾を投げて、すばやく逃走した。 ピアーズが発砲するが、すべて空振り。またしても、エイダに逃げられてしまった。 追跡を妨害され、少し苛立つクリスだったが、しかし、戦うべき敵、目指す目的は同じだというレオンの説得に折れる。 「……エイダはB.S.A.A.が追う、お前らはシモンズを追ってくれ」 「……クリス、お前を信じるぞ」 レオンは別れ際に、クリスにそう呼びかけた。クリスは、少し曖昧に頷いた。 H.Q.によれば、エイダは軍港に向かったという。そこには、数日前に突然連絡を絶ってどこかに消えた合衆国の空母が、 突如姿を現して停泊しているという。まず間違いなく、ネオアンブレラが奪い、テロに利用しているものに違いない。 真っ赤なスポーツカーでハイウェイを飛ばすエイダ。B.S.A.A.の二人は、それを追うべく銃座つきトラックに飛び乗った。 トラックの銃座を握るクリスは、運転席に座ろうとしたピアーズを呼び止めて、言った。 「……おまえのいうように、俺は目を背けていたのかもしれない、すべての過去から」 自らの過ちを認めたクリスの顔は、いままでの濁った怒りが薄れ、かつての爽やかさを取り戻していた。 クリスがようやく本当の自分を取り戻した姿を見て、ピアーズも彼への信頼を回復させる。 「行けるか、ピアーズ?」「任せてくださいよ、隊長!」 スポーツカーとトラックが、ハイウェイをひたはしる。敵が妨害してくるので、クリスは銃座を乱射して蹴散らした。 H.Q.にハイウェイの封鎖を要請するが、人員が割ける状態ではないとのこと。となれば、自力で追いつくしかない。 エイダの乗ったスーパーカーが乗り込むのと同時に、空母は離岸してしまった。 しかし二人はトラックを全力で走らせてジャンプさせ、無理やり空母の甲板へと乗り込んだ。 トラックから投げ出された二人は甲板上を転がる。事故同然だが、なんとか空母に乗り込むことに成功した。 190 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/12/07(金) 04 54 43.44 ID ByUqFtM40 【クリス編】 CHAPTER 4 無理やりな着艦の痛みにうめく暇もなく、二人は立ち上がって銃を構えた。すぐに警備のジュアヴォが押し寄せてくる。 今までの中国の街中で出会ったジュアヴォは、本格的な武器こそ持っていたが、服装はラフだし戦術も雑だった。 一方こちらはネオアンブレラの精鋭のようで、完全武装し、狙撃兵など複数の役割に分かれて統制の取れた攻撃をしてくる。 エイダが船橋へと入っていくのが見えた。それを追おうとする二人だが、階段を外され、隔壁が下ろされてしまった。 「やってくれたな…… どうしますか?」「作戦に変更なしだ、エイダを追う」 ピアーズの質問に、クリスは力強く答えた。 ジュアヴォたちに邪魔されながらも、甲板上を走り回って進路を開いていく二人。 空母に搭載されていたミサイルを操作し、隔壁にブチ込んで壊した。階段はレバー操作で元に戻した。 赤いジャケットと革のパンツ姿のエイダが、ワイヤーフックを駆使して華麗に進んでいく。二人はそれを追い続ける。 しかしエイダは、その気になればたやすく振り切れるのに、あえて姿を見せて誘導しているかのようだ。 ピアーズはそれを、エイダがこちらを振り回して挑発しているものと受け取って、腹立ち紛れに悪態をついた。 そうこうしていると、聞き覚えのある声が電話で話しているのが聞こえた。……ついにエイダに追いついた。 「あなたがわたしにくれたもの そっくりお返しするわシモンズ。あなたは人間でなくなるだけよ。……全人類と共にね。 今日までの世界を築いたのはあなたとあなたのファミリーよ。でも明日、目にするのは……まっさらな世界よ」 黒い短髪。青いドレス。エイダは通話相手を嘲笑い、通話を打ち切る。そして二人の追跡者に気づくと、また逃走した。 艦橋の頂上に辿り着いた。ここからではもう、空でも飛ばなければ逃げ道はない。ようやく、追い詰めた。 「懲りないわねぇ。バケモノになった部下たちは、きちんと始末できたの?」 しかしエイダは二人を嘲笑う。 「挑発に乗っちゃダメだ、隊長!」 ピアーズが叫ぶ。だがそれは余計な心配だった。クリスはもう、自分を取り戻している。 クリスの構えた銃が火を噴いた。だが、撃ち抜いたのは体ではなく、彼女が持っていたウィルス針を発射する銃。 「B.S.A.A.には使命がある。……一人なら、忘れていたところだ」 クリスは語った。エイダへと、自分へと、ピアーズへと。 そして、エイダへ告げる。「投降しろ」と。怒りもある。憎しみもある。しかし復讐に心を曇らせることは、もうない。 「……もう遅いわ、沖にむかった別の空母が、もう発射準備を始めている」 しかしエイダは余裕を崩さず言った。。 なにを、は、エイダは言わなかった。しかしクリスにはすぐ予想がついた。 さきほど、この空母でも見かけたもの。そして、3年前、ウェスカーが世界中へのウィルス撒布に使おうとしたもの。 「……ミサイルか!」 「あのラクーンの光景が蘇るの。でも今回は規模が違うわ……全世界でよ」 エイダの口元が、邪悪に歪んだ。 そのとき突然、ヘリコプターが現れた。驚く二人。だがエイダもまた驚いて振り返っている。 ヘリから身を乗り出していた黒服の男が、彼女の胸に弾丸を撃ち込んだ。そしてそのまま飛び去っていく。 「……あの男……考えることは一緒だったようね…… でももう、誰にも止められない……!」 致命傷を負い、血を吐きながら、それでもエイダは勝利を確信した笑みを浮かべる。そしてそのまま、船橋から落下した。 慌てて駆け寄り、下を覗き込むクリスとピアーズ。甲板には、ぴくりとも動かない体と、飛び散った血の跡が見えた。 あまりにもあっけなく、エイダは死んだ。理解しきれない謎を残して。 しかし、感慨に浸ったり、疑問に惑ったりしている余裕はなかった。テロは今なお進行中なのだ。 ピアーズはエイダが置いていったトランクをすばやくチェックした。 「新型の注射器のようです。二本ぶん開いてる……!」 1本はマルコに使ったものだろうが、あともう1本は? 「調べてる時間はない」 クリスは短く言った。怪物と遭遇したら、そのときに対処するしかない。 そして残った1本の押収を命じた。本部に持ち帰れば、分析用のサンプルになる。 「至急、所在不明の船舶を確認してくれ!」 クリスはH.Q.に強く要請した。 「首都機能が完全にマヒして、向こうの司令部と連絡が取れない、少し時間をくれ」 とH.Q.は答えた。 合衆国ではつい昨日、大統領がテロによって死亡。その空白を補うはずの補佐官も、私用で行方知れずになっている。 そんな状況で機敏に対応しろというのも無茶かもしれないが、しかしそんな悠長なことを言っていられる状況ではない。、 「急いでくれ! このテロすべてが陽動だ! ヤツらの目的は……全世界だ!」 それだけ伝えて、通信を切るクリス。そして二人は空母の格納庫へと向かった。おそらく、戦闘機があるはずだ。 格納庫へ向かう扉を開くには、3つのパスコードがいる。いつもの面倒な足止めに苛立ったが、集めなければ先へ進めない。 千切れても破片のまま動き回る不死身のB.O.W.【ラスラバンネ】に邪魔されつつも、パスコードを揃えて戦闘機を強奪した。 H.Q.からの連絡で、所属不明の空母があるとわかった。甲板に怪しげなミサイルがあることも確認された。 「エイダは世界中でラクーンを再現すると言っていた…… なのに、用意したのはミサイル1発?」 疑問に思ったクリスが再確認するが、しかし可能性のある船舶はそれしか見つからなかったという。 なんとなくイヤな予感を覚えつつも、ミサイルを止めるべく、二人を乗せた戦闘機は空を駆けていく。 空母は巡洋艦数隻に守られている。戦闘機だけですべてを撃沈するのは、とても可能とは思えない神業である。 だが、元空軍のエースだったクリスと天才狙撃手ピアーズの腕と、B.S.A.A.の強い信念があれば、不可能も可能になる。 巡洋艦と高射砲をすべて破壊し、着艦。ピアーズが甲板に飛び降りて、ミサイルへと走った。クリスは機銃で援護した。 すると、甲板にあった巨大なコンテナが壊れて、中身がこぼれ出た。それは超巨大B.O.W.、オグロマンだった。 「エイダめ、まさかここまで想定して!?」 クリスが機銃で応戦している隙に、ピアーズがミサイルの発射装置を解除した。カウントダウンが止まった。 あとは急いで脱出だ。クリスは甲板のクレーン近くへと機体を寄せて、ピアーズを無事回収した。 ……しかし、その瞬間を狙ったかのように、ミサイルが再起動した。またしても騙された。もう解除は間に合わない。 こうなったらミサイルを破壊するしかない。海や空へとウィルスは拡散してしまうだろうが、街中で炸裂するよりはマシだ。 空母に向けて戦闘機の誘導ミサイルを撃ち込む。……しかし、破壊は失敗。ミサイルは真っ直ぐに陸地へ飛んでいく。 ちょうどそのとき、【FOS】という組織のオペレーターから連絡が入り、DSOのレオンが通信を求めていると言われた。 「レオン、今どこにいる!?」 繋がるや否や、レオンの用件を聞く余裕もなく、クリスは慌てて尋ねた。 「ターチィの街のはずれだが、どうした?」「レオン、急いでそこから逃げろ!!」 だが、遅かった。空母を離れたミサイルは、ターチィ上空へと真っ直ぐに向かい、そこで爆発したのである。 紫色のガスが飛び散り、街中に広がる。……そう、C-ウィルスだ。ターチィの街は、瞬時に地獄へと化した。 その惨状を、レオンの口を通じて聞かされるクリスたち。怒りと責任感とで、街へ向かおうと操縦桿を傾けた。 しかし、その様子を察したレオンに制止された。クリスらに、もっと大切な任務を頼みたい、という。 ネオアンブレラの拠点である海底油田へと拉致された、世界を救う鍵を握る二人を救い出してもらいたい、と。 「一人はシェリー・バーキン。もう一人は、ジェイク・ミューラー。……あのアルバート・ウェスカーの息子だ」 レオンが、衝撃の事実を告げた。クリスは驚き、叫ぶ。 「レオン……。エイダ・ウォンは死んだ」 クリスが、自分の目で見た衝撃の事実を告げ返した。レオンは驚き、言葉を詰まらせた。 情報交換を終えて、通信を切った。 目指すは、海底油田。そこがきっと、最後の戦いの場所となるだろう。 193 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/12/07(金) 06 02 31.32 ID ByUqFtM40 【クリス編】 CHAPTER 5 夜は更けていく。時刻は夜半を回り、暦上では7月1日となった。 クリスとピアーズは戦闘機を操り、海底油田に繋がる海上プラントへと侵入した。 警備は下部に集中しているらしく、上部から下部へと繋がるエレベーターまではあっさりと到達できた。 「皮肉なもんですね」と、エレベーターの中でピアーズは言った。 ジェイクの父親、アルバート・ウェスカーは、バイオテロによって世界を破滅させる陰謀を巡らせた男だ。 しかしその息子は、バイオテロから世界を救う鍵になりえる男として、陰謀に巻き込まれている。 そして、そのジェイクを救い出そうとしているのが、ウェスカーを殺した張本人であるクリス。 それは確かに、皮肉にも思えた。だがクリスは「運命なのかもしれない」と言い換えた。 「……ウェスカーを倒したとき、俺の戦いはいったん終わりを迎えた」 クリスはそう続けた。発端である【洋館事件】以来、12年に渡る因縁は、ウェスカーの死によって終わった。 本当は、クリスが銃を撃ち続けねばならない理由など、もうなくなっているのかもしれない。 「ジェイクの救出が終わったら、俺は銃を置く。これからのことはお前に託す。大丈夫さ、お前ならな」 クリスは、ピアーズにそう伝えた。部下は、頼れる相棒に成長した。ピアーズになら、後を任せられる。 「さて……最後の仕事だ!」 侵入してさっそく、セキュリティルームに到着した。すばやくコンソール操作するクリス。 シェリーとジェイクが監禁されている部屋を発見したので、そのロックを解除しようとする。 が、やはり一筋縄ではいかないようで、警報が鳴ってしまった。解除できたかどうかはわからない。 なんにせよ、直接監禁場所へ行かねばなるまい。研究施設層へ向かう二人。 ピアーズと別行動をとったり合流したり、ジュアヴォと交戦しながら下へ下へと進む。 海底油田は複数ブロックに別れた構造であり、目指す研究施設層へは通路接続の操作が必要らしい。 それには各ブロックごとの気圧の調整など、全自動とはいえ複雑な手順が必要で、その間待たされる。 そして案の定、確実に足止めできるポイントとして、ネオアンブレラはそこに防衛線を用意していた。 「ようこそ侵入者…… あなた方は国連軍かしら? 状況から考えればB.S.A.A.が一番ありえるかしらね」 続々と集まってくる警備部隊と戦っている最中、エイダの音声が響いた。生前に録音したものだろう。 「ミサイルと共に産声を上げるこの世の地獄、その地獄にさらなる破滅をもたらす存在“ハオス”。 ここはハオスが目覚め、解き放たれる場所。ハオスの目覚めとともに私の望んだ世界は幕を開けるのよ」 エイダの音声は狂気的な野望を滔々と語った。エイダの真の狙いは、ここに眠るB.O.W.の解放らしい。 世界各地でのウィルス撒布テロも、あのミサイルすらも、この「ハオス」とやらのための囮に過ぎない。 未知の驚異的B.O.W.の情報をH.Q.に連絡したいが、深い海の底まではさすがの通信衛星も届かない。 クリスとピアーズは二人でこの状況をなんとかするしかない。 研究施設層との接続が完了、防衛部隊と戦っていてもキリがないので、振り切って奥へ進んだ。 すると、既に監禁部屋を脱出していたシェリーらと遭遇。意外とあっさりと合流できた。 「あなたたちが助けてくれたの?」「さすが正義の味方だな」 シェリーが生真面目に二人に礼を言うのに対して、ジェイクは相変わらず斜に構えた台詞を吐いた。 「……よく見れば父親の面影がある」 そのジェイクに対して、クリスはそう言った。 「親父を知っているのか?」「ああ。……俺が殺した」 それを聞き、ジェイクはクリスに銃を向ける。 「撃ちたいなら撃て。君にはその権利がある」 クリスはそれに対して抵抗も見せず、そう言った。 「なぜ親父を殺した? B.S.A.A.としてか? あんた個人として?」 ジェイクが質問した。 「……両方だ」 少しだけ考えて、クリスは正直に答えた。 ジェイクは、クリスに向けた銃を発砲。だが弾丸は、クリスの頬をかすめて、後ろの壁に穴を開けた。 「……こんなことやってる場合じゃねぇんだよ」 ジェイクはそう言った。 「言っとくが、話が終わったわけじゃねぇぞ? お前にはまだ訊くことがヤマのようにあんだよ」 その憎まれ口が、彼なりの精一杯の答えだった。 脱出を目指し、四人で行動することに。ここは、サイロ状(巨大な円筒形)の構造になっており、 そのド真ん中には超巨大なサナギがぶら下がっていた。おそらくは、これが例の【ハオス】だろう。 エレベーターを発見し、上部へと進む。ジュアヴォたちに妨害されるが、四人で共闘し撃退した。 だが問題は、機械が作動し、「ハオス開放」のプロセスが始まってしまっていること。 このサナギが目覚めれば、おそらくは……世界の終わり、であろう。 エレベーターで昇りつつ、サナギに攻撃する四人。だが針でつつくようなもので、効果は見えない。 ついに、サナギが羽化した。中から出てきたのは、ドクロ状の頭部を持ち、全身が透き通った軟体の怪物。 何本か触手を持っており、人型というよりは、クラゲやイカをベースにしたかのように見える。 その巨大な手が、四人を見つけて攻撃してくる。その一撃は足場を簡単に粉砕した。 「お前たちは先に行け! これは専門家の仕事だ」 と、クリスらはジェイクらに逃げるよう促す。 反発して戦おうとするシェリーだが、ジェイクはその手を強引に引いた。 「他にやることがあんだろ!?」というジェイク。そう、彼らの仕事は、生還して世界を救うことだ。 ジェイクらを逃がすための囮となって、クリスとピアーズはハオスをひきつけて走る。 足場はどんどん壊されていくが、なんとか逃げ切って最上部に辿りつき、エレベーターに乗った。 だが、あらゆる障害物をあっさり破壊して突き進んでくる相手から逃げられるわけもなく、追いつかれた。 結局、正面から戦うことになった。手持ちの武器を駆使して攻撃を加える。多少は怯ませることができた。 だが、ハオスが大暴れしたせいで、研究施設層はいたるところから浸水している。脱出せねばならない。 中央層へと、通路を走って戻る。だがまた活動開始したハオスが、通路を壊しながら追いかけてくる。 閉まっていく隔壁に、スライディングで滑り込む。最後の隔壁は、クリスが間に合うまでピアーズが体で押さえた。 なんとか中央棟へ戻れた、と思ったのもつかの間。ハオスが巨大な触手を一振りした。 直撃を受けたピアーズは吹き飛ばされ、壁に衝突。……運悪く、壁の一部が右肩を貫通してしまう。 さらに巨大機械を投げつけるハオス。ピアーズは避けられない。右腕が完全に挟み潰された。 クリスも一撃を受けて昏倒する。ハオスはそれを掴みあげて、締め上げる。握り潰すつもりか。 激痛と出血に朦朧としつつも、ピアーズはあることに気がついた。 ……空母でエイダから回収した、特別製のC-ウィルスの注射器が、懐から落ちて転がっている。 他に、手はない。 ピアーズは、右腕を根元から引きちぎった。這って進み、注射器を拾って…… それを、右肩へと打ち込んだ。 失った右腕が、瞬時に再生された。……ジュアヴォのような、変異した触手状の腕が。 特別製のウィルスの力か、その腕には、電撃のようなビームを放つ能力が備わっているようだ。 クリスの手持ちの銃火器と、ピアーズの右腕の能力とで、ハオスと戦うことになった。 ある種のクラゲは、死亡するとサナギ状になり、また誕生する、不老不死の性質を持つものがいるという。 ハオスもそれに似た性質を持っているのか、いくらかダメージを与えるとサナギ状に変化してしまい、 そこから再誕したときには以前のダメージがまったくなくなっているという、不死身に近い性質があった。 だが、絶対の不死身などありえない。サナギ状のときに攻撃すれば、不完全な状態で復活させられる。 そのときに短時間だが弱点となる臓器が見えるので、ナイフを突き刺してやれば、ダメージになる。 長い戦いの末、ついにハオスが沈黙した。ドロドロと溶けて、黒く濁ったカスになった。 ピアーズに肩を貸すクリス。ピアーズの変異は、まだ右腕だけで済んでいるようだ。若干混濁しているが、意識もある。 クリスはピアーズを励ました。ジェイクの体のウィルス抗体から治療法が見つかれば、助かるはずだ。 それまで、ウィルスに体を乗っ取られないように耐えればいい。そういって、二人で脱出を目指す。 二人は、脱出ポッドのある部屋に辿り着いた。クリスは機械を操作する。ポッドのひとつが開いた。 ピアーズに肩を貸し、ポッドの中に入れようとしたとき…… 不意に、ピアーズがクリスを突き飛ばした。 ポッドの中に転がるクリス。ピアーズは、ポッドに乗らずに外からその扉を閉めた。 「ピアーズ! 何をしている! 開けるんだ! 二人でここを出るんだ! だめだピアーズ! 諦めるんじゃない!」 クリスはそう叫んだ。だが、ピアーズにはわかっていた。ウィルスの侵食は進んでいる。自分はもう助からない。 いや、本当はクリスも気がついていた。既にピアーズの変異は、肩や首を超えて顔の半分まで進んでいたことに。 ポッドが射出された。クリスを乗せて、海の中を進んでいく。ピアーズの姿が、海底油田が、遠くなっていく。 ……ポッドを追いかけるように、油田から巨大な青白いモノが飛び出してきた。……ハオスだ。 だが、特大の電撃が、ハオスを襲った。ピアーズの最期の攻撃だった。彼は最後まで、B.S.A.A.として戦い抜いたのだ。 その直後に、沈んでいくハオスを巻き込んで、海底油田は大爆発を起こした。 ……ポッドが、海に浮かんでいる。東の空は赤く染まっていた。絶望の夜の終わりを告げる朝明けである。 クリスはそれを眺めると、自分の右手に視線を移した。 そこには、B.S.A.A.のワッペン。ピアーズに突き飛ばされたときに、彼の制服の肩から偶然むしりとったものだ。 ほんの2日前には記憶を失って呑んだくれていた自分が復帰できたのも、ピアーズのこのワッペンを見たおかげだ。 恩人であり、大切な相棒である男は、もういない。形見のワッペンを、クリスはぐっと握りしめた。 ……遠くから、迎えのヘリの羽音が聞こえた。 197 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/12/07(金) 06 09 56.77 ID ByUqFtM40 【クリス編】 Ending 日時不明。少し陰鬱な印象を与える曇り空。 東欧の酒場にて、クリスはステーキを食べていた。 そこは、かつて記憶を失った彼が酒に溺れていた酒場だ。そして、ピアーズと再会し、己の道を取り戻した場所。 そのときピアーズはこれと同じステーキを食べていて、なかなかうまいと言っていた。 「隊長、指令です」 クリスを呼ぶ声がした。クリスの部下のひとりだ。 その顔は、ピアーズではない。フィンでも、マルコでもない。他の部下たちでもない。彼らはもう死んだのだ。 だが、彼らの残した希望は、決して死なない。決して死なせはしない。クリスが、B.S.A.A.が戦い続ける限り。 「……わかった。案内してくれ」 クリスは席を立ち、堂々とした足取りで歩み去った。 戦士はまた、戦いに赴く。 その背中に、仲間たちから継いだ遺志を背負って。
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BIOHAZARD 6 クリス編:part64-33~35,71~79,190~197 33 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/11/08(木) 22 32 17.95 ID lKYL3JHR0 【クリス編】 CHAPTER 1 2013年6月29日、東欧某国。 男が、酒に溺れていた。年齢は中年か。隆々とした体躯と体中に残った傷跡。まさに歴戦の勇士の体であった。 そんな男が、明らかに荒れた様子で呑んでいた。暗く、そして危険な空気を漂わせて。 客は誰も近づかない。店の雰囲気も暗くなっていた。店も客も、明らかに迷惑していたが、男はそれでも酒を呑んでいた。 ついには、バーテンの女性に絡み、客の一人と乱闘を始めた。男は荒れに荒れて、落ちるところまで落ちていた。 青年が、男の乱暴を止めた。近寄りがたい雰囲気で呑んでいた男の隣にわざわざ座ってステーキを食べていた青年だ。 彼は【ピアーズ・ニヴァンス】と名乗り、男に【クリス・レッドフィールド】と呼びかける。 ピアーズは、クリスのことを半年間も探し回って、ようやく見つけ出したのだという。 だが、クリスにはピアーズと面識がなかった。いや、思い出せなかった。彼は半年前に記憶喪失に陥っていたのだ。 ピアーズは携帯端末を取り出し、写真を見せた。彼らが半年前に共に戦った任務の写真だった。 ほかにも、たくさんの男たちが彼らのチームだった。ピアーズは端末で仲間たちの写真を表示し、クリスに突きつける。 「事実から目を背けることは許されない、あんたは過去と向かい合うべきだ。 見ろ、見るんだ! みんなあんたにすべてを託して死んでいった仲間だ! そうやって目を背けて、なかったことにする気かよ!」 ピアーズの熱弁もむなしく、クリスはなにも思い出せない。しかし、ひとつだけ、クリスの頭を刺激するものがあった。 ピアーズのジャケットの肩に縫い付けられた、【B.S.A.A.】のエンブレム。 「そうだ。あんたの帰るべきところだ。みんなが待ってる。あんたを迎えに来たんだ、隊長」 ピアーズはそう言った。ほかにも数人の男たちが、クリスの傍に集まってきた。彼らは、クリスを慕う部下たちだった。 (俺は何から逃げていた? その答えを知らなければ、永遠に前に進めない……。) 記憶は相変わらず蘇らない。だがクリスは、この男たちの隊長として、再び戦場に立つことにした。 そこに、自分の失われた記憶が、自分の人生の意味があると信じて……。 翌6月30日。中国、偉葉(ワイイプ)。生物兵器【ジュアヴォ】を用いたテロ事件が発生。B.S.A.A.が鎮圧に向かう。 テロ組織は、国連職員数名を拉致し、とある雑居ビルに監禁しているらしい。その救出が、彼らの任務だ。 クリスは、アルファチームのリーダーとして戦うことになった。その隣には、ピアーズが従っている。 到着したクリスらを真っ先に出迎えたのは、カメラマンとリポーターだった。それらを押しのけて、クリスらは進む。 奇妙な仮面(京劇に使うものだろうか?)を被ったテロリストと遭遇。なんと、頭に銃弾を受けても活動している。 「ジュアヴォと遭遇! イドニア内戦時と同じ特徴を確認した!」 ピアーズがH.Q.(ヘッド・クォーター=本部)に報告するのが聞こえた。 ジュアヴォとは、人間同様の思考能力と武器活用などの応用力があるB.O.W.だ。さらに変異する性質も秘めている。 彼らは人に見えるが、もう人ではない。無抵抗の市民にも容赦がない、恐るべきバイオ兵器へと堕ちてしまった存在だ。 ジュアヴォは武装していた。ロケットランチャーを取り出して、B.S.A.A.のヘリを墜落させる者までいた。 それらと戦うクリス。記憶はまだなくとも、身体で覚えた戦いのカンは鈍っていないらしく、快進撃を続ける。 別チームの一人が、ジュアヴォに首を絞められているのに遭遇。ピアーズは細く息を吐いて、狙いを定めた。 見事、ジュアヴォの肘関節に命中。ピアーズは狙撃を最も得意としており、その腕は天才的である。 するとそのジュアヴォの腕が、急激に変異を始める。これが、ガナードやマジニと決定的に異なる特徴だ。 驚異的な再生能力により、ダメージをきっかけとしてより怪物的でより強力な特徴を備えた個体へと変異を遂げるのだ。 敵の反撃によって、部下の隊員が一人死亡した。その姿を見て、クリスの記憶の断片がフラッシュバックする。 一瞬、それに気をとられたクリスだが、ピアーズに肩を叩かれて我に返った。考えにふける時間はない。 クリスは任務に集中し直し、素早くチームに指示を出す。迷いはなく、内容も的確だ。 目標地点の雑居ビルにたどり着いた。だがチームの消耗が激しい。突入前に、他チームの到着を待つことにする。 ワラワラと湧いてくるジュアヴォたちを殲滅し、無事合流を果たしてビル内に突入した。 H.Q.の指示に従い、7Fへ。下半身全体が変異し、まるでクモかゴキブリのように走り回るジュアヴォが登場、 人質をがっちり抱きかかえてあっちこっちに逃げ回る。人質を傷つけないよう注意しつつ攻撃、救出に成功。 続いては1F。人質周辺の敵を一気になぎ倒し、安全を確保。……したと思った次の瞬間。 人質の背後に突然ジュアヴォが登場、刃物で人質の喉を切り裂こうとしている。 脳内物質による錯覚か、クリスには周辺の風景がスローモーションに見えた。狙いを定め、ジュアヴォを撃ち抜く。 他チームのメンバーからも続々と人質救出の連絡が入る。どうやら全員の救出に成功したようだ。 あとは脱出するだけだ。すべてのメンバーが脱出したら、汚染拡大を防ぐため、このビルは爆撃される。 だがあと一歩で脱出というところでビルが崩れ、クリスとピアーズだけが中に取り残されてしまった。 H.Q.に急いで連絡を取るが、もう爆撃は始まってしまった、とのこと。 「マズいな 仲間の爆撃で殉職なんてゴメンだぜ」 3Fまで戻り、バルコニーから外へ飛び出した。次の瞬間、ミサイルが着弾し、爆発。間一髪だった。 爆発と崩落が収まってから、クリスらは雑居ビルの跡地を確認しに向かった。 残骸の中には、ジュアヴォたちの成れの果てと思われる、黒粘土の人形のような物体がゴロゴロしていた。 その“サナギ”をみて、フラッシュバックと頭痛に襲われるクリス。半年前の記憶が、蘇る……。 71 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/11/16(金) 12 03 10.26 ID mIDdPHBW0 【クリス編】 CHAPTER 2 半年前、2012年12月24日。東欧、イドニア共和国。 クリスは、B.S.A.A.アルファチーム隊長として、バイオ兵器を用いている反政府ゲリラたちの鎮圧に来ていた。 複雑な内政事情により内戦が絶えないこの国は、まさにテロ組織が隠れ潜むのにぴったりの土地である。 部下の一人が、殉職した。敵の情報を持ち帰ってくるのに無茶をしたらしい。 「B.S.A.A.の使命は、バイオテロを根絶することだ。俺たちは捨て駒じゃない」 「大切なのはおまえたちが生き残り、同志を増やしていくことだ。ここにいるひとりひとりが希望だ」 クリスとピアーズは、部下たちにそう語った。 部下が命を賭けて入手した情報を確認した。反政府ゲリラたちは新型のB.O.W.ジュアヴォを用いているらしい。 ゲリラがそれを開発したわけがないだろうから、その背後に何らかのバイオテロ組織がいることは明白だ。 気を引き締めて任務にかかるよう、クリスは発破をかけた。 落ち着かない様子の部下に、クリスは声をかけた。彼の名は【フィン】。今回が初陣らしい。 「いいかフィン、俺たちは家族だ。家族を信じろ」 クリスは、フィンの肩を叩いて微笑んだ。 移動中、さっそく敵部隊と遭遇。すぐさま市街戦に突入した。 思い思いの服装と武器を手にしたゲリラたちとしばらく戦ううちに、ピアーズがあることに気づいた。 「弾を少しも恐れちゃいない…… 普通じゃないですよ、こいつら!」 クリスも同じことを感じていた。一見普通の人間に見えるが、どこかが違う。これがジュアヴォか。 作戦通りに着実に進んでいくアルファチーム。その道中に、驚異的な巨体のB.O.W.が登場した。 頭は建物の屋根よりさらに高く、その手足は大型トラックがミニカーに見えるほどに大きい。 現地の言葉で「巨人」を意味する【オグロマン】という名のB.O.W.であった。 「規格外もいいところだ! 新種のオンパレードだな!」 巨体にふさわしいタフさで、しとめ切れず逃げられる。そのついでに道を崩されて、遠回りを強いられた。 「あんな新種、報告されてませんよ!」「新しく投入されたんだろう」 ピアーズの疑問に、クリスが答える。どう考えても、ただの反政府ゲリラではない。 さらに進んでいく。が、B.S.A.A.の装甲車が地雷を踏んで走行不能になってしまった。 対戦車地雷まで出てくると、テロというよりもはや戦争だ。戦いはどんどん激しくなっていく。 徒歩で進んでいくが、ルート上で列車が横転している。……そう都合よく? 明らかに、足止めするワナ。 案の定、ジュアヴォたちがワラワラと湧いてくる。工兵フィンに爆破準備させ、他の隊員たちで応戦した。 線路沿いに進んでいくと、鉄橋に到着。ブラヴォーチームの負傷兵が1名、橋に取り残されているのが見えた。 さらに奥には、ぱっと見は旧型だが相当改造されているらしい戦車。さらに奥はバリケードで封鎖されている。 ブラヴォーチームと合流、正面と側面の二手に別れて攻略することにした。 狙撃の名手であるピアーズは側面部隊のほうが向いているだろう。クリスはそちらへピアーズを送った。 フィンが先行、クリスもそれを追う。だが、足を踏み入れたとたん、橋が爆破された。 崩れそうな橋にしがみつき、這い登るクリス。フィンに引き上げてもらって、なんとか命拾いした。 戦車とまともに遣り合っては勝ち目はない。ピアーズになにか有効な目標はないか聞いてみる。 彼はタンクローリーを発見し、狙撃。爆破、炎上。戦車と周辺のジュアヴォは巻き込まれて灰になった。 クリスとピアーズは合流し、橋の上部を確保。しかし敵はさらに増援を送ってくる。 フィンに負傷兵の様子を聞くが、足をやられていて動けないらしい。 「隊長! 私たちにはかまわず、先に行ってください!」 「部下を見捨てて逃げるような真似はしないさ、ここで待っててやる、引きずってでも連れて来い!」 ワラワラとわいてくるジュアヴォを必死に防ぐが、倒しても倒してもキリがない。装甲砲台まで出てきた。 だがフィンも新人ながらなかなか骨がある。負傷者を担いで、クリスらの下へしっかり合流した。 その彼に、橋を爆破するよう指示するクリス。フィンは絶妙なタイミングで爆破し、装甲砲台を下へ落とした。 これで追われる危険は大きく減少した。クリスらはやっと橋から撤収した。 負傷者をブラヴォーチームに任せて、アルファは作戦を継続することに。すると、予期せぬ客と遭遇した。 まだ若い男女の二人連れで、女性のほうが「合衆国エージェント、【シェリー・バーキン】」と名乗った。 「シェリー? ラクーン・シティ事件の? クレアから聞いている。妹が世話になっているな」 クリスは、初対面ながらも縁深い相手との出会いに、顔を綻ばせた。 「クリス、後ろのヤツは反政府ゲリラです」 ピアーズが目ざとく見つけ、クリスに報告した。 シェリーは慌てて、彼は故あって自分が保護した人物で、生粋のゲリラではなく傭兵である、と弁護する。 だが青年、「カネ次第で怪物とだって隊列組むぜ」と不謹慎な冗談を吐き、ピアーズはそれにカチンと来る。 一触即発になったが、喧嘩が始まる前に、ゲリラとの戦闘が始まった。 上空に謎のヘリが登場し、それがぶら下げていたB.O.W.を投下したのだ。超巨大な怪物、オグロマンである。 「安全なところへ下がっていろ!」 「いいえ、戦わせて! もう……守られる立場は卒業したの!」 クリスの心配をよそに、シェリーは協力することを提案。クリスもそれを快く受け入れた。 B.S.A.A.エコーチームが増援に駆けつけているが、敵組織の高射砲が邪魔でヘリが近づくことができない。 B.O.W.の相手をしながら高射砲を破壊する、二面作戦が必要になる。 工兵であるフィンが、高射砲に爆薬を仕掛ける。その間、クリスらは援護に徹した。 オグロマンを撃破するが、2体目が登場。さっき逃がしたヤツだ。 時間が経ったからか、むき出しだった背中の弱点が中に引っ込んでしまい、金属のパーツがちょこんと見えるだけになっている。 ある程度ダメージを与えた後、ビルの屋上から背中へと飛び移り、力任せに引き抜く。ヘリからの爆撃で、怪物は絶命した。 無事エコーと合流できた。クリスはヘリコプター部隊に、シェリーらを本国へ連れて帰るように指示を出した。 歩み去ろうとする青年……【ジェイク・ミューラー】に、クリスが声をかけた。「……どこかで会ったか?」 ジェイクは一瞬ためらってから、減らず口を叩いた。「B.S.A.A.のアホ面どもの見分けなんかつくか」 「テメェ、いい加減に!」ピアーズが激高するが、クリスが止めた。 「逃がしてよかったんですか? あいつら傭兵にやられた仲間だってたくさんいるんですよ!」 アツくなってクリスにつっかかるピアーズ。だがクリスは冷静にそれをなだめた。 「俺たちは戦争に来たんじゃない。B.S.A.A.の使命はバイオテロと戦うことだ。それを忘れるな」 シェリーらと別れ、アルファチームは目標であった庁舎内部へ突入した。 敵の大部隊がいるかと思いきや、誰もいない。代わりに、人型の奇妙なオブジェが立ち並んでいた。 「これ… ヒトですか?」 「生体反応アリだ、まるで“サナギ”だな」 不気味な展開に戸惑いながらも、B.S.A.A.隊員は調査を進める。 部隊を分けて探索を進めるよう指示するクリス。ピアーズとフィンとで、奥を調べることにする。 すると、生存者らしき人影が見えたので、追う。青いドレスに整った黒の短髪という、場違いな格好の女性に見えた。 オフィスらしき部屋に着いた。それを見計らったように、そこにあった“サナギ”が、突如変異を遂げた。 甲殻類のような体表に身を包んだ重量級B.O.W.【】である。非常にタフで、排除するのは骨が折れた。 庁舎奥へと進む。そこには、大量のクスリのアンプルが散らばっていた。 「【C-ウィルス】……反政府ゲリラはそう呼んでいたわ」 アンプルに気をとられた3人の隙を着くように、女性が話し掛けてきた。青いドレス、黒の短髪のアジア人女性。 「【エイダ・ウォン】。ここの職員よ、捕まっていたの。……保護してもらえないのかしら?」 銃を突き付けられた女性は、余裕ある態度を崩さずにそう言った。クリスらは当然、それだけでは疑いは解かない。 女性は薄く笑いを浮かべると、ある情報を口にした。 「【ネオアンブレラ】。反政府組織に協力していた組織がいたの。確かそいつらがそう名乗っていたわ」 エイダと名乗る女性は、テロリスト一味ではないようだが、妙に余裕たっぷりな態度が気になる。 クリスは、女性を保護するようフィンに指示したが、同時に警戒は解かないようにとピアーズに耳打ちをした。 ホールに戻る。エイダの案内で直通の近道を通った。と、ホールにあったサナギがすべて孵っている。 チーム全員と合流してこちらの数も増えているが、それ以上にサナギから出てきたB.O.W.の数が多い。 こいつらを掻き分けて正面から退出するは不可能と判断し、上階へと逃げることにする。 庁舎の中はサナギだらけで、行けども行けどもB.O.W.に遭遇する。だが数は少なくなっており、対処しやすい。 チームは一丸となって出口へと向かった。あと少しで脱出できそうだ。 ……そのとき、ピアーズがふとあることに気がついた。慌てて周囲を見渡す。そして叫んだ。 「さっきの女がいない!」 そして、ワナが作動した。前を走っていたクリスとピアーズは運よく逃れたが、他全員が鉄格子に閉じ込められる。 「エスコートしてくれてありがとう。お礼にイイモノあげるわ」 ワナを作動させた張本人であるエイダ・ウォンが、やはり余裕のある勝ち誇った声で言った。そしてあるモノを投げる。 野球のボールほどの大きさで、無数に針が仕込まれた装置。それは、B.S.A.A.メンバーたちの真ん中で炸裂した。 無数の針が隊員たちへと突き刺さる。針には、C-ウィルスが仕込まれていた。 クリスは鉄格子を叩いた。開かないとわかっても、しがみついて必死に叫んだ。 しかしクリスの呼びかけもむなしく、クリスの目の前で、部下たちはC-ウィルスでサナギと化してしまった。 鉄格子が開き、サナギのひとつが羽化する。絶望に呆然とするクリスは、殴り飛ばされ、後頭部を強打してしまった。 クリスの意識は薄れていく。視界は闇に覆われ、音もかすれていく。 だが意識を失う寸前まで、クリスの視界から、変わり果てた部下たちの姿が消えることはなかった……。 76 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/11/16(金) 13 12 07.58 ID mIDdPHBW0 【クリス編】 CHAPTER 3 ……回想は終わり、場面は2013年6月30日のワイイプへと戻る。 B.S.A.A.の火炎放射隊が、雑居ビル残骸で発見されたサナギを丁寧に焼却していた。 その姿を眺めながら、クリスは低く冷たい声でピアーズに質問した。「エイダ・ウォンはどうしている?」と。 「記憶が戻ってるんですか?」 ピアーズは驚き、説明を始めた。「あの女は、ネオアンブレラと関係していて……」 「この街にいるかいないのかどっちだ!?」 遮るように、クリスが怒声を上げた。余計な情報は要らない。 「……目撃情報あり。この街にいます、絶対に」 その気持ちを察して、ピアーズは端的に答えた。 クリスはすぐさま、今後の指揮をすべて自分が執ると宣言。他チームも含めた部隊再編をすばやく指示した。 負傷者の保護やこのビル跡地の処理にあたるチームを作り、残りの活動できる戦力はすべて追跡チームとした。 目標はたたひとつ。部下の仇である憎きテロリスト、エイダ・ウォンの追跡・捕獲である。 早速移動を開始する、と、廃墟の地下から、ヘビ状のB.O.W.がヌルリと登場したのに遭遇した。 どういう仕組みか、いわゆる光学迷彩の原理で、周辺の光景と同化して透明になる能力を持っているらしい。 B.O.W.あるところにテロリストあり。このB.O.W.を追跡すれば、エイダの元に辿り着くであろう。 追跡の最中、部下が食らいつかれ、そのまま連れ去られた。再び部下の命が奪われたことに、ますます激昂するクリス。 公園を抜けて、雑居ビルへ。大都会の裏通りのゴミゴミした集落を超えていく。 すると、街を彷徨っているシェリーとジェイクを発見した。 「あいつら生きていたのか! イドニアから半年、行方がわからなくなっていたんです」 とピアーズが、ここ半年の情勢を知らないクリスに説明した。そこに、重装甲の武装ヘリが登場する。 さらにはジュアヴォたちがワラワラと湧き出し、シェリーらを包囲する輪を作った。 「あいつら、ネオアンブレラに追われていたのか!」 ピアーズが、謎が解けた、という感じで叫んだ。 「よし、怪物どもを大掃除するぞ」 クリスはそう決断し、部隊に攻撃を命じた。 B.S.A.A.アルファチームは彼らを援護し、武装ヘリとジュアヴォに攻撃を仕掛ける。 シェリーらを安全なルートに誘導しようと通信兵が呼びかけるが、通信機器が壊れているのか無視しているのか、 二人からの返事はなく、誘導することは不可能。その場に留まる二人をとにかく守る形での戦闘になった。 今回のジュアヴォは、腰から下が完全に変異し、バッタの足のようになった姿をしていた。 すさまじい跳躍力でビルを飛び越え、高い安定性で武装ヘリの上に着地して銃撃をしてくる。恐ろしい生物兵器だ。 だがB.S.A.A.も歴戦、身体能力で劣っていてもそう負けはしない。ジュアヴォを殲滅、ヘリも撃墜した。 ジェイクと目が合うクリス。だが、お互い言葉を交わすことはなかった。立ち去っていくシェリーとジェイク。 「あの二人を保護しましょう! アイツらだけじゃ危険です!」 ピアーズが提案した。 「……放っておけ 行くぞ」 しかしクリスは冷たく却下。彼の目には、エイダの追跡しか映っていないかのようだ。 人命を何より大事にしていたクリスのものとは考えられない命令だ。驚いたピアーズは、珍しく反対した。 「隊長、行かせちゃダメです! ネオアンブレラに追われてるんですよ!?」 「俺たちの目的はB.O.W.の殲滅だ! 何度も言わせるな! エイダ・ウォンの居場所を突き止める!」 「……隊長、お願いだ、冷静になってくれ……」 ピアーズの願いもむなしく、クリスは聞く耳を持たなかった。 先へ進むアルファチーム。廃墟付近でB.O.W.に連れ去られた部下の死体を見つける。ひどい有様だった。 クリスの頭に、ますます血が昇った。ピアーズの反対も無視して、廃ビルへの強行突入を指示する。 だが、立体的な構造で隠れるところも多い建築物は、ヘビ型B.O.W.にとっては格好の狩場だ。 通風孔から、天井裏から、窓から、突然飛び出してきては、隊員が一人ずつ襲われ、殺されていく。 クリスは完全に逆上している。ヘビの気配を感じ、そちらへ一目散に突っ込んでいった。 チームワークを省みない、明らかな暴走だ。返り討ちに遭いそうになり、ピアーズに救われた。 「ひとりで突っ走るなんて、なに考えてるんだ!?」 ついにピアーズは我慢の限界に達し、クリスに噛み付いた。 「決めるのは俺だ、ついてこれないヤツは切り捨てていくぞ」 だがクリスも、方針を曲げる気はない。 チームに険悪な雰囲気が漂う。そんな中でも、一人また一人と隊員たちは命を散らしていく。 ビル内でB.O.W.と戦闘、弱らせて裏路地へ追いやった。 そこでB.O.W.は、透明化を解除し、表面を硬質化して防御を固める戦術に切り替えてきた。銃弾は通用しない。 クリスらは、ビルの電源を使って電撃を浴びせる作戦を実行し、ついに仕留めることができた。 B.O.W.を仕留めたが、しかしそれは小目標に過ぎない。クリスは、既に二人しかいなくなった部下に告げる。 「エイダがまだだ。あいつを片付けない限り、何も終わりじゃない」 まだ冷静になりきれていないクリスに、ピアーズはなおも慎重策を提案する。だが、その台詞をさえぎるように、 「私を探しているのかしら?」 妖艶な女性の声が響いた。忘れもしないこの声。青のドレス。間違いない、エイダ・ウォンだ。 だが、銃を構える暇もなく、エイダの放ったウィルス弾が、最後の部下、マルコに命中した。 見慣れてしまった、もう見たくなかった、あの変異が起こってしまう。マルコは、怪物になってしまった。 エイダはさっさと逃げてしまった。クリスらは、部下であった怪物と戦わねばならない。 エイダへの怒りをますますたぎらせるクリスだが、半年前のトラウマが蘇り、銃を構えることをためらう。 「こうなったらもう殺すしかない。俺たちが仲間としてコイツにできることは、もう……」 ピアーズが、戦うことを促す。クリスも覚悟を決めて、マルコを、いや、B.O.W.を、射殺した。 B.O.W.の死体から、C4爆弾が転がり落ちた。マルコは工兵で、爆発物担当だったのだ。 その忘れ形見を拾い上げ、クリスはそれを鍵のかかった鉄格子に叩き付けるようにして設置。道を作り、進んだ。 完全に頭に血が上っているクリスを見て、ピアーズは落ち着くように言った。 「おまえはここまでされてなんとも思わないのか!」 クリスはなおも興奮してピアーズにも噛み付く。 しかしピアーズは反論した。今のクリスは、明らかに復讐に取り憑かれ、正気を失っている。 「B.S.A.A.の使命なんかどうでもよくなってるんだろ!? 今のアンタの姿を、フィンたちに見せられるのかよ!」 その指摘にクリスは顔色を変える。しかし、大切な部下を、自分の記憶を、奪ったエイダへの怒りは収まらない。 売り言葉に買い言葉の勢いもあって、気に入らなければ着いてこなければいい、一人でも進む、とクリスは宣言した。 しかしピアーズはあくまで共に行動すると言った。「今のアンタは危なっかしすぎる」と。 H.Q.と情報をやり取りした結果、スラムを抜けて、南の港湾方面へ向かうことにした二人。 道中、ジュアヴォ編隊に襲われつつも、それしきで足止めされるほどヤワではない。突破して進んでいく。 むしろ防御網にぶつかるたびに、目指す標的に近づいているという確信が深まり、足取りは力強くなっていく。 ボートに乗り込むエイダを肉眼で確認。ここで捕らえる、と思ったが、そこに武装ヘリが登場した。 やむなく追跡を中断し、港の高級レストランに逃げ込んで応戦。見事、武装ヘリの撃墜に成功した。 だが、エイダには逃げられた。H.Q.にエイダの逃走先を確認。どうやら近くに研究所があるらしい。そちらへ向かう。 到着すると、ちょうどドアをくぐるエイダを発見した。誰かと話している最中なのか、ドアの中に気をとられている様子だ。 反射的に発砲するクリス。だが命中しなかった。エイダはフックショットですばやく脱出した。 「逃がすか……!」 クリスは低く呟き、すぐさま追跡。 いかにも研究所然としたエリアに踏み込む。案の定、侵入者を阻む仕掛けが満載であった。 「よく来たわね。ここは私のお気に入りの場所…… せっかくだから楽しんでいって?」 エイダが姿を見せ、挑発した。 仕掛けを解除し、追いかける。部屋に閉じ込められて新兵器の実験台にされたりもしたが、突破して追いかけた。 そしてクリスとピアーズで挟み撃ちにし、角に追いやった。ついに、ついに追い詰めた。 しかし、クリスの背後から、何者かが妨害に入ってくる。不意を突かれたものの、クリスはしっかりと応戦した。 乱闘の末、銃を突きつけあう二人。お互いの顔を見つめあい……そして、気づく。 「……クリス?」「……レオンか!」 そう、彼らはDSOの【レオン・S・ケネディ】と、その同僚の【ヘレナ・ハーパー】だった。 「彼女を殺させるわけにはいかない、彼女はテロの重要証人だ」 レオンが言った。 「証人? 彼女はテロの首謀者だ!」 クリスが反論し、「違う、首謀者はシモンズだ!」 またレオンが言い返す。 「俺たちは、部下を皆殺しにされた!」「俺たちは、アメリカ大統領と市民7万人を失った!」 お互い、一歩も譲らない。 「ネオアンブレラだぞ? この名前が俺たちにどういう意味を持つのか……!」 「わかってる!」 「どうあってもこの女を信じるというのか?」 「……信じる」 クリスの問いに、レオンは明確に答えた。 そうこうしている隙に、エイダは閃光手榴弾を投げて、すばやく逃走した。 ピアーズが発砲するが、すべて空振り。またしても、エイダに逃げられてしまった。 追跡を妨害され、少し苛立つクリスだったが、しかし、戦うべき敵、目指す目的は同じだというレオンの説得に折れる。 「……エイダはB.S.A.A.が追う、お前らはシモンズを追ってくれ」 「……クリス、お前を信じるぞ」 レオンは別れ際に、クリスにそう呼びかけた。クリスは、少し曖昧に頷いた。 H.Q.によれば、エイダは軍港に向かったという。そこには、数日前に突然連絡を絶ってどこかに消えた合衆国の空母が、 突如姿を現して停泊しているという。まず間違いなく、ネオアンブレラが奪い、テロに利用しているものに違いない。 真っ赤なスポーツカーでハイウェイを飛ばすエイダ。B.S.A.A.の二人は、それを追うべく銃座つきトラックに飛び乗った。 トラックの銃座を握るクリスは、運転席に座ろうとしたピアーズを呼び止めて、言った。 「……おまえのいうように、俺は目を背けていたのかもしれない、すべての過去から」 自らの過ちを認めたクリスの顔は、いままでの濁った怒りが薄れ、かつての爽やかさを取り戻していた。 クリスがようやく本当の自分を取り戻した姿を見て、ピアーズも彼への信頼を回復させる。 「行けるか、ピアーズ?」「任せてくださいよ、隊長!」 スポーツカーとトラックが、ハイウェイをひたはしる。敵が妨害してくるので、クリスは銃座を乱射して蹴散らした。 H.Q.にハイウェイの封鎖を要請するが、人員が割ける状態ではないとのこと。となれば、自力で追いつくしかない。 エイダの乗ったスーパーカーが乗り込むのと同時に、空母は離岸してしまった。 しかし二人はトラックを全力で走らせてジャンプさせ、無理やり空母の甲板へと乗り込んだ。 トラックから投げ出された二人は甲板上を転がる。事故同然だが、なんとか空母に乗り込むことに成功した。 190 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/12/07(金) 04 54 43.44 ID ByUqFtM40 【クリス編】 CHAPTER 4 無理やりな着艦の痛みにうめく暇もなく、二人は立ち上がって銃を構えた。すぐに警備のジュアヴォが押し寄せてくる。 今までの中国の街中で出会ったジュアヴォは、本格的な武器こそ持っていたが、服装はラフだし戦術も雑だった。 一方こちらはネオアンブレラの精鋭のようで、完全武装し、狙撃兵など複数の役割に分かれて統制の取れた攻撃をしてくる。 エイダが船橋へと入っていくのが見えた。それを追おうとする二人だが、階段を外され、隔壁が下ろされてしまった。 「やってくれたな…… どうしますか?」「作戦に変更なしだ、エイダを追う」 ピアーズの質問に、クリスは力強く答えた。 ジュアヴォたちに邪魔されながらも、甲板上を走り回って進路を開いていく二人。 空母に搭載されていたミサイルを操作し、隔壁にブチ込んで壊した。階段はレバー操作で元に戻した。 赤いジャケットと革のパンツ姿のエイダが、ワイヤーフックを駆使して華麗に進んでいく。二人はそれを追い続ける。 しかしエイダは、その気になればたやすく振り切れるのに、あえて姿を見せて誘導しているかのようだ。 ピアーズはそれを、エイダがこちらを振り回して挑発しているものと受け取って、腹立ち紛れに悪態をついた。 そうこうしていると、聞き覚えのある声が電話で話しているのが聞こえた。……ついにエイダに追いついた。 「あなたがわたしにくれたもの そっくりお返しするわシモンズ。あなたは人間でなくなるだけよ。……全人類と共にね。 今日までの世界を築いたのはあなたとあなたのファミリーよ。でも明日、目にするのは……まっさらな世界よ」 黒い短髪。青いドレス。エイダは通話相手を嘲笑い、通話を打ち切る。そして二人の追跡者に気づくと、また逃走した。 艦橋の頂上に辿り着いた。ここからではもう、空でも飛ばなければ逃げ道はない。ようやく、追い詰めた。 「懲りないわねぇ。バケモノになった部下たちは、きちんと始末できたの?」 しかしエイダは二人を嘲笑う。 「挑発に乗っちゃダメだ、隊長!」 ピアーズが叫ぶ。だがそれは余計な心配だった。クリスはもう、自分を取り戻している。 クリスの構えた銃が火を噴いた。だが、撃ち抜いたのは体ではなく、彼女が持っていたウィルス針を発射する銃。 「B.S.A.A.には使命がある。……一人なら、忘れていたところだ」 クリスは語った。エイダへと、自分へと、ピアーズへと。 そして、エイダへ告げる。「投降しろ」と。怒りもある。憎しみもある。しかし復讐に心を曇らせることは、もうない。 「……もう遅いわ、沖にむかった別の空母が、もう発射準備を始めている」 しかしエイダは余裕を崩さず言った。。 なにを、は、エイダは言わなかった。しかしクリスにはすぐ予想がついた。 さきほど、この空母でも見かけたもの。そして、3年前、ウェスカーが世界中へのウィルス撒布に使おうとしたもの。 「……ミサイルか!」 「あのラクーンの光景が蘇るの。でも今回は規模が違うわ……全世界でよ」 エイダの口元が、邪悪に歪んだ。 そのとき突然、ヘリコプターが現れた。驚く二人。だがエイダもまた驚いて振り返っている。 ヘリから身を乗り出していた黒服の男が、彼女の胸に弾丸を撃ち込んだ。そしてそのまま飛び去っていく。 「……あの男……考えることは一緒だったようね…… でももう、誰にも止められない……!」 致命傷を負い、血を吐きながら、それでもエイダは勝利を確信した笑みを浮かべる。そしてそのまま、船橋から落下した。 慌てて駆け寄り、下を覗き込むクリスとピアーズ。甲板には、ぴくりとも動かない体と、飛び散った血の跡が見えた。 あまりにもあっけなく、エイダは死んだ。理解しきれない謎を残して。 しかし、感慨に浸ったり、疑問に惑ったりしている余裕はなかった。テロは今なお進行中なのだ。 ピアーズはエイダが置いていったトランクをすばやくチェックした。 「新型の注射器のようです。二本ぶん開いてる……!」 1本はマルコに使ったものだろうが、あともう1本は? 「調べてる時間はない」 クリスは短く言った。怪物と遭遇したら、そのときに対処するしかない。 そして残った1本の押収を命じた。本部に持ち帰れば、分析用のサンプルになる。 「至急、所在不明の船舶を確認してくれ!」 クリスはH.Q.に強く要請した。 「首都機能が完全にマヒして、向こうの司令部と連絡が取れない、少し時間をくれ」 とH.Q.は答えた。 合衆国ではつい昨日、大統領がテロによって死亡。その空白を補うはずの補佐官も、私用で行方知れずになっている。 そんな状況で機敏に対応しろというのも無茶かもしれないが、しかしそんな悠長なことを言っていられる状況ではない。、 「急いでくれ! このテロすべてが陽動だ! ヤツらの目的は……全世界だ!」 それだけ伝えて、通信を切るクリス。そして二人は空母の格納庫へと向かった。おそらく、戦闘機があるはずだ。 格納庫へ向かう扉を開くには、3つのパスコードがいる。いつもの面倒な足止めに苛立ったが、集めなければ先へ進めない。 千切れても破片のまま動き回る不死身のB.O.W.【ラスラバンネ】に邪魔されつつも、パスコードを揃えて戦闘機を強奪した。 H.Q.からの連絡で、所属不明の空母があるとわかった。甲板に怪しげなミサイルがあることも確認された。 「エイダは世界中でラクーンを再現すると言っていた…… なのに、用意したのはミサイル1発?」 疑問に思ったクリスが再確認するが、しかし可能性のある船舶はそれしか見つからなかったという。 なんとなくイヤな予感を覚えつつも、ミサイルを止めるべく、二人を乗せた戦闘機は空を駆けていく。 空母は巡洋艦数隻に守られている。戦闘機だけですべてを撃沈するのは、とても可能とは思えない神業である。 だが、元空軍のエースだったクリスと天才狙撃手ピアーズの腕と、B.S.A.A.の強い信念があれば、不可能も可能になる。 巡洋艦と高射砲をすべて破壊し、着艦。ピアーズが甲板に飛び降りて、ミサイルへと走った。クリスは機銃で援護した。 すると、甲板にあった巨大なコンテナが壊れて、中身がこぼれ出た。それは超巨大B.O.W.、オグロマンだった。 「エイダめ、まさかここまで想定して!?」 クリスが機銃で応戦している隙に、ピアーズがミサイルの発射装置を解除した。カウントダウンが止まった。 あとは急いで脱出だ。クリスは甲板のクレーン近くへと機体を寄せて、ピアーズを無事回収した。 ……しかし、その瞬間を狙ったかのように、ミサイルが再起動した。またしても騙された。もう解除は間に合わない。 こうなったらミサイルを破壊するしかない。海や空へとウィルスは拡散してしまうだろうが、街中で炸裂するよりはマシだ。 空母に向けて戦闘機の誘導ミサイルを撃ち込む。……しかし、破壊は失敗。ミサイルは真っ直ぐに陸地へ飛んでいく。 ちょうどそのとき、【FOS】という組織のオペレーターから連絡が入り、DSOのレオンが通信を求めていると言われた。 「レオン、今どこにいる!?」 繋がるや否や、レオンの用件を聞く余裕もなく、クリスは慌てて尋ねた。 「ターチィの街のはずれだが、どうした?」「レオン、急いでそこから逃げろ!!」 だが、遅かった。空母を離れたミサイルは、ターチィ上空へと真っ直ぐに向かい、そこで爆発したのである。 紫色のガスが飛び散り、街中に広がる。……そう、C-ウィルスだ。ターチィの街は、瞬時に地獄へと化した。 その惨状を、レオンの口を通じて聞かされるクリスたち。怒りと責任感とで、街へ向かおうと操縦桿を傾けた。 しかし、その様子を察したレオンに制止された。クリスらに、もっと大切な任務を頼みたい、という。 ネオアンブレラの拠点である海底油田へと拉致された、世界を救う鍵を握る二人を救い出してもらいたい、と。 「一人はシェリー・バーキン。もう一人は、ジェイク・ミューラー。……あのアルバート・ウェスカーの息子だ」 レオンが、衝撃の事実を告げた。クリスは驚き、叫ぶ。 「レオン……。エイダ・ウォンは死んだ」 クリスが、自分の目で見た衝撃の事実を告げ返した。レオンは驚き、言葉を詰まらせた。 情報交換を終えて、通信を切った。 目指すは、海底油田。そこがきっと、最後の戦いの場所となるだろう。 193 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/12/07(金) 06 02 31.32 ID ByUqFtM40 【クリス編】 CHAPTER 5 夜は更けていく。時刻は夜半を回り、暦上では7月1日となった。 クリスとピアーズは戦闘機を操り、海底油田に繋がる海上プラントへと侵入した。 警備は下部に集中しているらしく、上部から下部へと繋がるエレベーターまではあっさりと到達できた。 「皮肉なもんですね」と、エレベーターの中でピアーズは言った。 ジェイクの父親、アルバート・ウェスカーは、バイオテロによって世界を破滅させる陰謀を巡らせた男だ。 しかしその息子は、バイオテロから世界を救う鍵になりえる男として、陰謀に巻き込まれている。 そして、そのジェイクを救い出そうとしているのが、ウェスカーを殺した張本人であるクリス。 それは確かに、皮肉にも思えた。だがクリスは「運命なのかもしれない」と言い換えた。 「……ウェスカーを倒したとき、俺の戦いはいったん終わりを迎えた」 クリスはそう続けた。発端である【洋館事件】以来、12年に渡る因縁は、ウェスカーの死によって終わった。 本当は、クリスが銃を撃ち続けねばならない理由など、もうなくなっているのかもしれない。 「ジェイクの救出が終わったら、俺は銃を置く。これからのことはお前に託す。大丈夫さ、お前ならな」 クリスは、ピアーズにそう伝えた。部下は、頼れる相棒に成長した。ピアーズになら、後を任せられる。 「さて……最後の仕事だ!」 侵入してさっそく、セキュリティルームに到着した。すばやくコンソール操作するクリス。 シェリーとジェイクが監禁されている部屋を発見したので、そのロックを解除しようとする。 が、やはり一筋縄ではいかないようで、警報が鳴ってしまった。解除できたかどうかはわからない。 なんにせよ、直接監禁場所へ行かねばなるまい。研究施設層へ向かう二人。 ピアーズと別行動をとったり合流したり、ジュアヴォと交戦しながら下へ下へと進む。 海底油田は複数ブロックに別れた構造であり、目指す研究施設層へは通路接続の操作が必要らしい。 それには各ブロックごとの気圧の調整など、全自動とはいえ複雑な手順が必要で、その間待たされる。 そして案の定、確実に足止めできるポイントとして、ネオアンブレラはそこに防衛線を用意していた。 「ようこそ侵入者…… あなた方は国連軍かしら? 状況から考えればB.S.A.A.が一番ありえるかしらね」 続々と集まってくる警備部隊と戦っている最中、エイダの音声が響いた。生前に録音したものだろう。 「ミサイルと共に産声を上げるこの世の地獄、その地獄にさらなる破滅をもたらす存在“ハオス”。 ここはハオスが目覚め、解き放たれる場所。ハオスの目覚めとともに私の望んだ世界は幕を開けるのよ」 エイダの音声は狂気的な野望を滔々と語った。エイダの真の狙いは、ここに眠るB.O.W.の解放らしい。 世界各地でのウィルス撒布テロも、あのミサイルすらも、この「ハオス」とやらのための囮に過ぎない。 未知の驚異的B.O.W.の情報をH.Q.に連絡したいが、深い海の底まではさすがの通信衛星も届かない。 クリスとピアーズは二人でこの状況をなんとかするしかない。 研究施設層との接続が完了、防衛部隊と戦っていてもキリがないので、振り切って奥へ進んだ。 すると、既に監禁部屋を脱出していたシェリーらと遭遇。意外とあっさりと合流できた。 「あなたたちが助けてくれたの?」「さすが正義の味方だな」 シェリーが生真面目に二人に礼を言うのに対して、ジェイクは相変わらず斜に構えた台詞を吐いた。 「……よく見れば父親の面影がある」 そのジェイクに対して、クリスはそう言った。 「親父を知っているのか?」「ああ。……俺が殺した」 それを聞き、ジェイクはクリスに銃を向ける。 「撃ちたいなら撃て。君にはその権利がある」 クリスはそれに対して抵抗も見せず、そう言った。 「なぜ親父を殺した? B.S.A.A.としてか? あんた個人として?」 ジェイクが質問した。 「……両方だ」 少しだけ考えて、クリスは正直に答えた。 ジェイクは、クリスに向けた銃を発砲。だが弾丸は、クリスの頬をかすめて、後ろの壁に穴を開けた。 「……こんなことやってる場合じゃねぇんだよ」 ジェイクはそう言った。 「言っとくが、話が終わったわけじゃねぇぞ? お前にはまだ訊くことがヤマのようにあんだよ」 その憎まれ口が、彼なりの精一杯の答えだった。 脱出を目指し、四人で行動することに。ここは、サイロ状(巨大な円筒形)の構造になっており、 そのド真ん中には超巨大なサナギがぶら下がっていた。おそらくは、これが例の【ハオス】だろう。 エレベーターを発見し、上部へと進む。ジュアヴォたちに妨害されるが、四人で共闘し撃退した。 だが問題は、機械が作動し、「ハオス開放」のプロセスが始まってしまっていること。 このサナギが目覚めれば、おそらくは……世界の終わり、であろう。 エレベーターで昇りつつ、サナギに攻撃する四人。だが針でつつくようなもので、効果は見えない。 ついに、サナギが羽化した。中から出てきたのは、ドクロ状の頭部を持ち、全身が透き通った軟体の怪物。 何本か触手を持っており、人型というよりは、クラゲやイカをベースにしたかのように見える。 その巨大な手が、四人を見つけて攻撃してくる。その一撃は足場を簡単に粉砕した。 「お前たちは先に行け! これは専門家の仕事だ」 と、クリスらはジェイクらに逃げるよう促す。 反発して戦おうとするシェリーだが、ジェイクはその手を強引に引いた。 「他にやることがあんだろ!?」というジェイク。そう、彼らの仕事は、生還して世界を救うことだ。 ジェイクらを逃がすための囮となって、クリスとピアーズはハオスをひきつけて走る。 足場はどんどん壊されていくが、なんとか逃げ切って最上部に辿りつき、エレベーターに乗った。 だが、あらゆる障害物をあっさり破壊して突き進んでくる相手から逃げられるわけもなく、追いつかれた。 結局、正面から戦うことになった。手持ちの武器を駆使して攻撃を加える。多少は怯ませることができた。 だが、ハオスが大暴れしたせいで、研究施設層はいたるところから浸水している。脱出せねばならない。 中央層へと、通路を走って戻る。だがまた活動開始したハオスが、通路を壊しながら追いかけてくる。 閉まっていく隔壁に、スライディングで滑り込む。最後の隔壁は、クリスが間に合うまでピアーズが体で押さえた。 なんとか中央棟へ戻れた、と思ったのもつかの間。ハオスが巨大な触手を一振りした。 直撃を受けたピアーズは吹き飛ばされ、壁に衝突。……運悪く、壁の一部が右肩を貫通してしまう。 さらに巨大機械を投げつけるハオス。ピアーズは避けられない。右腕が完全に挟み潰された。 クリスも一撃を受けて昏倒する。ハオスはそれを掴みあげて、締め上げる。握り潰すつもりか。 激痛と出血に朦朧としつつも、ピアーズはあることに気がついた。 ……空母でエイダから回収した、特別製のC-ウィルスの注射器が、懐から落ちて転がっている。 他に、手はない。 ピアーズは、右腕を根元から引きちぎった。這って進み、注射器を拾って…… それを、右肩へと打ち込んだ。 失った右腕が、瞬時に再生された。……ジュアヴォのような、変異した触手状の腕が。 特別製のウィルスの力か、その腕には、電撃のようなビームを放つ能力が備わっているようだ。 クリスの手持ちの銃火器と、ピアーズの右腕の能力とで、ハオスと戦うことになった。 ある種のクラゲは、死亡するとサナギ状になり、また誕生する、不老不死の性質を持つものがいるという。 ハオスもそれに似た性質を持っているのか、いくらかダメージを与えるとサナギ状に変化してしまい、 そこから再誕したときには以前のダメージがまったくなくなっているという、不死身に近い性質があった。 だが、絶対の不死身などありえない。サナギ状のときに攻撃すれば、不完全な状態で復活させられる。 そのときに短時間だが弱点となる臓器が見えるので、ナイフを突き刺してやれば、ダメージになる。 長い戦いの末、ついにハオスが沈黙した。ドロドロと溶けて、黒く濁ったカスになった。 ピアーズに肩を貸すクリス。ピアーズの変異は、まだ右腕だけで済んでいるようだ。若干混濁しているが、意識もある。 クリスはピアーズを励ました。ジェイクの体のウィルス抗体から治療法が見つかれば、助かるはずだ。 それまで、ウィルスに体を乗っ取られないように耐えればいい。そういって、二人で脱出を目指す。 二人は、脱出ポッドのある部屋に辿り着いた。クリスは機械を操作する。ポッドのひとつが開いた。 ピアーズに肩を貸し、ポッドの中に入れようとしたとき…… 不意に、ピアーズがクリスを突き飛ばした。 ポッドの中に転がるクリス。ピアーズは、ポッドに乗らずに外からその扉を閉めた。 「ピアーズ! 何をしている! 開けるんだ! 二人でここを出るんだ! だめだピアーズ! 諦めるんじゃない!」 クリスはそう叫んだ。だが、ピアーズにはわかっていた。ウィルスの侵食は進んでいる。自分はもう助からない。 いや、本当はクリスも気がついていた。既にピアーズの変異は、肩や首を超えて顔の半分まで進んでいたことに。 ポッドが射出された。クリスを乗せて、海の中を進んでいく。ピアーズの姿が、海底油田が、遠くなっていく。 ……ポッドを追いかけるように、油田から巨大な青白いモノが飛び出してきた。……ハオスだ。 だが、特大の電撃が、ハオスを襲った。ピアーズの最期の攻撃だった。彼は最後まで、B.S.A.A.として戦い抜いたのだ。 その直後に、沈んでいくハオスを巻き込んで、海底油田は大爆発を起こした。 ……ポッドが、海に浮かんでいる。東の空は赤く染まっていた。絶望の夜の終わりを告げる朝明けである。 クリスはそれを眺めると、自分の右手に視線を移した。 そこには、B.S.A.A.のワッペン。ピアーズに突き飛ばされたときに、彼の制服の肩から偶然むしりとったものだ。 ほんの2日前には記憶を失って呑んだくれていた自分が復帰できたのも、ピアーズのこのワッペンを見たおかげだ。 恩人であり、大切な相棒である男は、もういない。形見のワッペンを、クリスはぐっと握りしめた。 ……遠くから、迎えのヘリの羽音が聞こえた。 197 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2012/12/07(金) 06 09 56.77 ID ByUqFtM40 【クリス編】 Ending 日時不明。少し陰鬱な印象を与える曇り空。 東欧の酒場にて、クリスはステーキを食べていた。 そこは、かつて記憶を失った彼が酒に溺れていた酒場だ。そして、ピアーズと再会し、己の道を取り戻した場所。 そのときピアーズはこれと同じステーキを食べていて、なかなかうまいと言っていた。 「隊長、指令です」 クリスを呼ぶ声がした。クリスの部下のひとりだ。 その顔は、ピアーズではない。フィンでも、マルコでもない。他の部下たちでもない。彼らはもう死んだのだ。 だが、彼らの残した希望は、決して死なない。決して死なせはしない。クリスが、B.S.A.A.が戦い続ける限り。 「……わかった。案内してくれ」 クリスは席を立ち、堂々とした足取りで歩み去った。 戦士はまた、戦いに赴く。 その背中に、仲間たちから継いだ遺志を背負って。
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BIOHAZARD 6 ジェイク編 :part64-369~377 369 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/19(土) 12 06 07.02 ID sTdhb+xk0 【ジェイク編】 CHAPTER 1 時は2012年12月24日。場所は東欧、イドニア共和国。 寂れた村の、薄汚い建物に、その男はいた。短く刈った坊主頭、頬に走る刃疵。動作は気だるげだが、油断なく構えている。 彼の名は【ジェイク・ミューラー】。金で雇われて命を懸ける、いわゆる傭兵である。 彼はこともなげに、首筋に“ある薬”を打ち込んだ。周辺を見渡すと、他の男たちが、同じように薬を打ち込んでいる。 「これ、効いたかい? 栄養剤らしいが…… 俺にはわかんねえ」 冗談めかして、誰に聞かせるでもなく呟くジェイク。彼自身には何の変化も見られなかった。 ……しかし、彼以外の男たちは、皆、急速な変異を遂げてしまう。顔は醜く腫上がり、突如血に餓えたように他人を襲う。 傭兵の一人が、ジェイクに襲い掛かってきた。それをこともなげに捌き、殴り、蹴り、投げ、壁に叩きつけるジェイク。 「俺たちは金で雇われた身だ。意味わかるな? ……仲間でもなんでもねぇってことだ」 容赦なく、とどめの横蹴り。傭兵は力尽き、崩れ落ちる。その死体は、何かの化学変化か、みるみる消し炭へと変わった。 「あなた、薬を打ったのね?」 突如現れた謎の女性……金髪の、まだ若い女だ……が、ジェイクに話し掛けてきた。 「薬に興味があるのか? なら、下で配ってる姉ちゃんに聞きな」 ジェイクは答える。女性は、その返事の内容にではなく、ジェイクがまだ人間的な返事ができることに驚いていた。 「……やはり、あなたには抗体が……!」 女性が話を進めようとするが、その暇はなかった。薬によって怪物と化した傭兵たちが襲い掛かってきたのだ。 女性はジェイクに、ダストシュートを使って脱出するよう促す。状況が把握できないまま、ジェイクはとりあえずそれに従う。 下水へと抜けた。女性は、合衆国エージェント【シェリー・バーキン】と名乗ったが、ジェイクは特に興味を抱かなかった。 紛争地帯の貧しい家庭に生まれ、絶望に晒されて育った彼には、所属意識どころか、信念も希望もないのだ。 信じられるのは、自分の力と、金だけ。依頼さえあれば誰とでも組むし、誰とでも戦う。この女は依頼主、それだけで十分だ。 協力して寂れた村を抜け、脱出を目指す。 道中、B.S.A.A.の部隊と遭遇するが、発砲された。ジェイクは現在、反政府ゲリラに雇われた身で、その服装をしている。 B.S.A.A.とはもともと友好関係とは言えないし、ましていまや彼以外全員怪物化している。撃たれるのも無理はない。 370 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/19(土) 12 06 48.43 ID sTdhb+xk0 ある程度進んで休めるところに着いたので、そこで小休止ついでに話を進めることにした。 「20万ドルだ。それとB.O.W.は別料金、1体につき1000ドル」 さっそく契約条件を切り出すジェイク。しかしシェリーは「雇いに来たんじゃない」とそれを否定した。 「欲しいのは、あなたの『血』。それが世界を救う鍵になる」 彼女は語る。ゲリラたちが変異した化け物は【ジュアヴォ】と呼ばれているバイオ兵器である。 新型ウィルス【C-ウィルス】によって生み出されるもので、近々C-ウィルスを用いたバイオテロが計画されているらしい。 テロを防ぐには、ワクチンが必要だ。ワクチン開発には、ウィルス抗体が必要だ。そしてそれは、ジェイクの血の中にある。 話を聞いたジェイクは、微笑を浮かべた。世界を救う英雄になる栄光も重圧も、彼には関係なかった。 「……5000万ドルだ。値引きは一切なし。それで俺の血を売ってやる」 協力して先へ進む二人。岩肌にへばりつくように作られた、今にも崩れそうな建造物を抜ける。 道中、道が大きく崩れ落ちている。ジェイクは手ごろな鉄の棒を見つけると、体操競技のようにしてたやすく飛び越えた。 「どうした、早く来いよ」「……そんなアクロバットはできないわ。別の道を探してみる」 いまいち呼吸が合わない二人だが、そんなこんなで共に進んでいくうちに、川のそばに出た。 向こうに見える鉄橋の上では、B.S.A.A.とゲリラとがやりあっているようだ。 「橋を攻めんのは無謀だぜ、切り札の戦車があったはずだ。B.S.A.A.の連中はもうすぐ棺オケだな」 「そんなことない、必ず勝つわ……。彼らには強い信念があるもの」 ジェイクは冷笑したが、シェリーは彼らを弁護した。とはいえ、どちらが正しいのか、見届けている時間はない。 B.S.A.A.のヘリに見つかり銃撃を食らったり、ゲリラのベースキャンプに入ってしまいひたすら逃げ回ったり……。 散々な目に遭いながらも、ようやく市街地へと近づいてきた。とりあえず、戦場の最前線からは離れられただろう。 しかし、一息つく暇もなく、新手のB.O.W.が登場。ツギハギの肉体を、さらに金属パーツで補強したような巨体の怪物だ。 【ウスタナク】、通称【捕縛者】である。右腕はアタッチメントになっており、状況で武器を付け替えて襲ってくる。 現在は捕縛用のクローを装備しており、ジェイクを掴んだら背中にある拘束機にくくりつけ、そのまま拉致するつもりのようだ。 「逃げるわよ!」シェリーが叫ぶ。 「くらいやがれ!」無視してジェイクはガスボンベを銃撃した。 しかし、ひるんだ様子もなく、巨体の怪物は再び歩みを進めてくる。 「……なるほど、逃げるが勝ちだな」 二人はひたすらに逃走した。 371 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/19(土) 12 08 16.39 ID sTdhb+xk0 高山地帯の下水溝の出口は、住宅地の上部だった。民家の屋根に転がり落ちるジェイクとシェリー。 狭い窓を選んで飛び込んだことで、なんとか巨体の怪物の追跡を断ち切ることができた。 「何モンだ、あいつは?」「追っ手よ。あなたを捕まえるための」 ジェイクの問いに、シェリーが簡潔に答える。それ以上議論している暇はなかった。歩みを止めるのは危険だ。 ひたすらに進み、廃工場へと辿り着いた。が、見つかったようだ。懸垂下降で兵隊が降りてくる。 さらには、ウスタナクまで追いついてきた。進路のドアはロックされており、解除している余裕はない。迎え撃った。 激しい戦闘の末、ウスタナクにダメージを与えることに成功。しかし、老朽化していた廃工場の床が抜け、二人も落下してしまった。 廃工場の地下は静かで、少し落ち着いて話ができそうな状況だった。 「カネでドンパチやってる傭兵が死に方にゼイタクは言えねぇが、こんなワケのわからねぇ状況で殺られちゃ納得いくわけねぇ。 あのイカれた巨人はどちら様だ、きちんと説明してくれ」 ジェイクの要求に、シェリーは応じて答える。 「ジュアヴォと同じ、C-ウィルスで作ったバイオ兵器。バイオテロ組織“ネオアンブレラ”の追っ手よ。 研究のために、抗体を持つあなたが欲しいのよ。生け捕りが無理なら死体でも……」 話の大きさに唖然とするジェイク。シェリーは彼を励ますように、必ず守ると繰り返した。ジェイクは世界を救う存在なのだから。 「世界を救うのは俺じゃねぇ、『俺の血』だろ? カネと引き換えのな」 しかし、ジェイクはその言葉を冷たく返すのだった。 先へ進むと、B.S.A.A.の部隊と遭遇した。シェリーがI.D.を示すと、隊長らしき男が彼女を知っているようだった。 「シェリー? ラクーン・シティ事件の? 妹から聞いている。アルファチーム・リーダー、【クリス・レッドフィールド】だ」 隊長は二人を快く歓迎する。が、その傍らにいる若い隊員が、ジェイクの服装が反政府ゲリラのものだと気づき、反発する。 シェリーは事情があって保護したと説明するが、ジェイクは彼女の気苦労などどこ吹く風で、ケンカなら買う態度を崩さなかった。 だが、ケンカが始まるより先に、敵組織の攻撃のほうが早かった。ヘリコプターで、異常にデカイB.O.W.が運ばれてきた。 数階建ての建物よりもなお大きいその怪物は、現地の言語で「巨人」を意味する、【オグロマン】という名を持っている。 「安全なところへ下がっていろ!」 「いいえ、戦わせて! もう……守られる立場は卒業したの!」 クリスの心配をよそに、シェリーは協力することを提案。クリスもそれを快く受け入れた。 B.S.A.A.エコーチームが増援に駆けつけているらしいが、敵組織の高射砲が邪魔でヘリが近づくことができない。 B.O.W.の相手をしながら高射砲を破壊する、二面作戦が必要になる。 「クリス! あの大きいのは私たちに任せて!」「『私たち』って俺もかよ? メンドクセぇな…」 シェリーの提案に、ジェイクは軽く舌打ちする。が、結局は生き延びるには協力して戦うしかないのも事実だった。 372 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/19(土) 12 10 59.87 ID sTdhb+xk0 1体を撃破するが、2体目が登場した。こちらは先ほどの個体と違い、背中の弱点が露出していない。 ある程度ダメージを与えた後、ビルの屋上から背中へと飛び移り、力任せに弱点を開く。ヘリからの爆撃で、怪物は絶命した。 クリスがB.S.A.A.の輸送ヘリを手配してくれた。それで国外へ脱出できる。……うまくいけばだが。 歩み去ろうとするジェイクに、クリスが声をかけた。「……どこかで会ったか?」 ジェイクは一瞬ためらってから、いつもの減らず口を叩いた。「B.S.A.A.のアホ面どもの見分けなんかつくか」 若い隊員が激高するが、クリスが止めた。 ヘリ機内。シェリーは本部と条件の交渉をしている。ジェイクの要求額は法外だが、金銭で話がつくなら早いと踏んだか、 合衆国は取引に応じるそうだ。「話が早えや」と無邪気に喜ぶジェイク。しかし突如顔を曇らせ、シェリーに質問する。 「ところで、さっきの男…」「クリス?」「ああそれ。あの男… …いや、なんでもない」 口ごもるジェイク。シェリーは詮索しようかどうか迷うが、その答えを決める前に、飛行機は振動に襲われた。 ウスタナクだ。やはりそうやすやすと脱出させてはくれないらしい。 なんとか攻撃を繰り返すが、振り落としきれず、ヘリは機関部がやられて墜落。二人はもう1機のヘリに飛び移った。 そこに、敵組織の戦闘ヘリが登場。ウスタナクはそれの脚部に掴まっている。 右腕のパーツは、ジェイク捕獲用の爪状から戦闘用のガトリングガンに変更されていた。 「…最悪の展開だぜ」 戦闘用ヘリ3機の編成で、ウスタナクはヘリからヘリへと飛び移りながら攻撃してくる。 機銃で狙うが、ヤツの耐久力は尋常ではない。ヘリを狙ったほうがよさそうだ。 ヘリを撃墜したが、同時に体当たりも食らってしまい、こちらのヘリも墜落を免れない状態に陥った。 しかもウスタナクはしつこくへばりついてくる。「いい加減落ちやがれ!」 ジェイクの銃撃で、ようやく敵は転落した。 だが、ジェイクとシェリーももう限界だ。転落する。だが、その一瞬前に、転がり落ちてきたパラシュートをキャッチできた。 ジェイクがすばやく装着し、シェリーは必死でしがみつく。パラシュートが、開いた。 しかし、ヘリのローターがパラシュートの布を半分引き裂いてしまう。二人は雪山の中へと落ちていった……。 373 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/19(土) 13 45 03.80 ID sTdhb+xk0 【ジェイク編】 CHAPTER 2 ジェイクは意識を取り戻した。掌を見ると、赤い血がべっとりとついていた。 しかしジェイク自身に痛みはない。……ふと気づく。胸に圧し掛かるもう一人の重みに。 血は、シェリーのものだった。その背中には、ヘリの破片が深々と刺さっている。 「……どうすりゃいい……?」「……抜いて」 考えるジェイクに、シェリーは苦しそうに言った。正気を疑う目で、ジェイクはシェリーを見返す。 モノが刺さった傷は、抜いたら出血が激しくなる。これは常識だ。このサイズの傷では、間違いなく死ぬ。 それでも、シェリーには錯乱などの兆候は見られない。正気で言っているのだ。ジェイクはそれを信じて、破片を抜いた。 すると、シェリーの背中にざっくりと開いた傷口は、みるみるうちに消えた。衣服の破れ目以外、痕跡は見当たらない。 「……マジかよ。俺の血より、アンタを研究したほうが世界の役に立つんじゃねぇか?」 「……研究はされたわ。嫌というほど」 ジェイクの、驚きからこぼれた不謹慎な軽口に、シェリーは暗い顔をして答えた。 シェリーは、落とした端末を拾い上げて操作した。……そしてすぐに異常に気づいた。ジェイクのデータがない。 墜落のショックでチップが散乱してしまったらしい。幸い、落下した位置は発信機のおかげで把握できている。 吹雪の雪山だが、捜索に支障はない。偶然山小屋も発見した。早く捜索を終えて、あそこで休息をとろう。 雪山を捜索中、まるで彫刻の作りかけのような、人型のおぞましい“なにか”を発見した。 「ジュアヴォの成れの果て、“サナギ”みたいなものよ。そして最後は……怪物に生まれ変わる」 シェリーのその言葉に答えるように、サナギの背中が開き、おぞましいクリーチャーが飛び出してきた。 「……抗体とやらに心から感謝だぜ」 ジェイクは、珍しく皮肉抜きで呟いた。 メモリーを拾い集めて、山小屋に入った。外の吹雪は強くなる一方で、止むまでは行動の起こしようがなかった。 沈黙の重さにいたたまれなさそうなシェリーを察して、ジェイクは彼女の身体の秘密について、話題を振った。 彼女はまだ幼い頃の過酷な体験を語った。14年前……1998年にラクーン・シティで起こった、あの惨劇のことを。 彼女にとって、それは家族を失った思い出だが、しかし同時に、かけがえのない友人と出会った思い出でもあった。 「命懸けで守ってくれたレオンとクレアを見て思ったわ。どんなに悪い状況でも、決してあきらめてはいけないんだって」 ……感傷的なムードは、突然の銃声で打ち破られた。マシンガンやスノーモービルで備えたジュアヴォの集団に包囲されている。 「……悪い状況だ。篭城戦だぜ」 374 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/19(土) 13 47 03.36 ID sTdhb+xk0 爆弾、銃撃、スタンロッド。猛攻を受けるが、凄腕の傭兵であるジェイクは難なくそれらを撃破する。 が、敵はクリーチャーだけではなかった。爆発音のせいで、雪崩が発生したのだ。スノーモービルを奪って、急いで逃げ出す。 「雪崩にまで追われるなんてな! 神サマにも見捨てられたか!?」 「心配しないで! 私だけは絶対に見捨てないから!」 モービルで一気に突っ走り、最後はモービルでジャンプし、それを踏み台にもう一段ジャンプ。走って走って、洞窟へ入った。 運よく、雪崩は洞窟の入り口で止まった。氷解や岩石が詰まってくれて、かつ洞窟が崩れないでくれた。本当に幸運だった。 洞窟の出口を探して少し進むと、すぐに明らかに人工の扉が見えた。なにかの施設の一部らしい。これなら出られそうだ。 ……しかし、ドアを開けた先には…… ウスタナク。まだ生きていたようだ。だが、何かを待っているようにじっと動かない。 周辺には、なにやら青い光を放つ虫のような生物。そこにジュアヴォが近づいて虫の光に触れたら、捕縛者は一気に動き出した。 ジュアヴォを掴み、握り潰し、放り投げる。……どうやら、虫状のお供クリーチャーを用いて敵を探索する機能もあるらしい。 虫の光に触れないようにしながら、そっと先に進んでいく二人。 ようやく抜け切った……と思いきや、凍結した床を踏んだとたん、音に反応したウスタナクに見つかってしまう。 「ちくしょうめ、走れ!」 結局は全力疾走だ。狭い隙間にスライディングで滑り込み、一時的に逃げ切ることに成功。 しかし、外に出るためにはカードキーが必要だ。さきほど哀れにも被害に遭ったジュアヴォの死体がカードキーを握っている。 虫の視界に入らないように、また凍結した床を踏んで音を立てないように、慎重に二手に分かれた二人。 ジェイクがリモコン爆弾でウスタナクの気を逸らしている隙に、シェリーがジュアヴォの死体からカードキーを回収、再合流。 ドアのカードキー認識音に反応し、突っ込んでくるウスタナク。二人はすばやくドアを閉める、が、巨人の馬鹿力は抑えられない。 次々と重厚なロックがかかったドアを開けては先に進む二人。次々とドアをぶち破っては追いかけてくるウスタナク。 このままではいずれ追いつかれる……そう思ったとき、二人はあるものは発見した。それは……岩石掘削用の重機。 早速乗り込み、起動する。さすがの不死身の巨人も、大型重機のパワーには勝てず、巨大ドリルに貫かれた。 ようやく洞窟を抜け出した二人。シェリーの味方との合流地点はもうすぐだ。敵の待ち伏せがあったが、慌てず応戦する二人。 だが背後から、まだ生きていたウスタナクが襲い掛かる。殴られてシェリーは吹っ飛び、ジェイクは叩き付けられた。 動けないジェイクに、謎の女が近づいてきた。短髪のアジア女性で、雪山だというのに露出が多い青のドレス姿だ。 「……よお、誰かと思えば、栄養剤配ってた姉ちゃんか」 「あなたがウェスカーJr?」 ジェイクの呼びかけを無視して、謎の女……【エイダ・ウォン】は勝手に話を進めた。 「アルバート・ウェスカー。世界の破滅を目論んだ、素敵な大馬鹿者。あなたのお父さんよ」 エイダは、謎解きのパズルピースを残すように、それだけを言い残した。そして合図を出して、そのまま引き上げていく。 それに答えるように、ウスタナクは大きな足を振り上げて、そして、ジェイクの上へと……。 375 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/20(日) 19 25 16.46 ID BMLs5R5+0 【ジェイク編】 CHAPTER 3 ……それから半年。ジェイクらは、謎の組織に監禁されていた。白い床、白い壁、白い扉。白一色の奇妙な施設であった。 2013年6月30日。今日も今日とて、スーツ姿で京劇の仮面をつけたジュアヴォたちが、ジェイクを移送すべく扉を開ける。 半年の間、何度も繰り返された光景。だが、今日はいつもとは違う日となった。 「……そろそろいいか。オマエらのことも大体分かったし」 ジェイクは流暢な中国語でそう呟き、手錠をつけられたまま戦える格闘技「カポエラ」の要領で、ジュアヴォに襲い掛かる。 彼の生い立ちから考えて、中国語やカポエラを正式に学んだことがあるとは思えない。 中国語に関しては、施設に閉じ込められている間に構成員たちが交わす会話を聞きかじっただけでマスターしてしまったのだろう。 カポエラについても、おそらく真似しただけか、あるいは存在も知らずに適当にやったらそれっぽくなっただけなのかもしれない。 いずれにせよ、彼の知能と身体能力が驚異的であることを示しているといえる。 呆気にとられるジュアヴォたちをよそに、倒した見張りから手錠の鍵と端末を奪ったジェイクは、ジュアヴォたちを挑発した。 そのまま全員を素手で殴り倒すと、電源装置の鍵を奪い取り、監禁施設の電源を落とす。そして、脱走を開始した。 別の場所で同じく監禁されていたシェリーも、停電に乗じて脱走を始めていた。 敵の館内放送でそれを知ったジェイクは、道中で発見したマシンガンつきの監視カメラの操作装置を使い、シェリーの援護をした。 シェリーが、監禁施設エリアを抜けるドアのロックを解除した。ジェイクもカメラでそのコードを盗み見て、ドアを開ける。 そして二人は合流する。シェリーを発見し、思わず顔に喜色を浮かべるジェイクだが、ふとあることに気づいて慌てて目を背けた。 ジェイクの反応を見て、自分が薄手の白衣1枚しか着ていないことを思い出し、シェリーも慌てて見られないように隠れた。 ラブコメばりの気まずい雰囲気だったが、ちょうどそこはロッカールームだったので、二人とも衣服を整えることにした。 偶然だろうか、半年前に奪われた装備もあった。有難く回収し、身につけることにする。 手持ち無沙汰に、雑談をした。今わかっていることは、ここは中国のどこかにある、ネオアンブレラの施設であることだけだ。 ジェイクが盗み聞いたところによれば、連中は、彼の体の抗体を用いてC-ウィルスを強化する研究をしているらしい。 376 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/20(日) 19 25 50.34 ID BMLs5R5+0 事の重大さに驚きつつ、他に何か聞いたことはないか、と尋ねるシェリー。その言葉に、ジェイクは表情を曇らせながら答えた。 「……アルバート・ウェスカーって知ってるか?」 シェリーは誤魔化そうとするが、下手な演技は簡単に見破られた。 ジェイクは「……知ってたんだな」と不機嫌に呟く。 アルバート・ウェスカー。旧アンブレラの「ウェスカー計画」で造られた、人工の天才。 知的・身体的素質の両面において超人的であるだけでなく、さらにはあらゆるウィルスに対する抗体と適合力を持ち合わせている。 3年前、バイオテロにて世界を滅ぼす一歩手前まで行ったものの、凶悪ウィルス「ウロボロス」によって怪物と化して死亡したという。 「俺はてっきり、おふくろを捨てたただのチンピラだと思ってたぜ!」 ジェイクは叫んだ。 彼は怒っていた。いままで知らなかった自分の父親の秘密に。シェリーが、それを知っていながら隠していたことに。 欲しくて貰ったわけではない「呪われた血」に。望みもしないのに戦いに巻き込まれ、こうして拉致されたことに。 そして…… 父親に捨てられ、生きていくことに希望も信念もないまま傭兵になるしかなかった、自分自身の境遇に。 ジェイクのその言い分を聞いて、シェリーは複雑な心境に至った。二人の境遇は、あまりにも似ていた。 彼女の父親はアンブレラの幹部研究員で、あのラクーン・シティ事件を引き起こし、自らにウィルスを投与して怪物となった。 そして彼女はその父親に襲われて感染、「呪われた血」を持つ身となった。望まない生活を続けてきたことも、同じだ。 だが彼女は幸運にも、レオンとクレアに出会った。その経験が、彼女に強い希望と信念とを与えていた。 だから彼女は、政府からの長い研究にも耐えたし、その後はエージェントとなって自分の力で道を切り開くことを選んだ。 シェリーには、戦う力を持ちながら、自分で道を選んで切り開いていくことをしないジェイクが、身勝手に思えた。 だから、少し苛立ちをこめて、言った。「あなたと父親は関係ない。信念が持てないのは、自分の問題だわ」と。 衣服と装備を整え終わった二人は、脱出を再開する。例のごとく、研究所エリアを抜けると、まるで趣が異なる建物となった。 いかにも中国風なゴテゴテとした飾りに溢れた豪邸である。その規模に驚きつつも、二人は足を止めずに進み続ける。 警備隊のジュアヴォとときおり交戦しつつ進んでいくと、ロビーのような場所に出た。大きな扉は、おそらく玄関であろう。 そのドアを抜ければ外に出られるだろうが、この状態で外に出ても二人は孤立無援である。 「上層部の指示を仰がないと、外へ出ても行き場がないわ」 「その通りだな。どこかで連絡取り合うのが先か」 二人は脱出よりも、通信設備の探索を優先することにした。 377 :Biohazard 6◆l1l6Ur354A:2013/01/20(日) 19 26 21.11 ID BMLs5R5+0 ロビーにおいてあるデカくて福福しい銅像に、硬貨の投入口と、なにか注意書きがあるのが見えた。 どうやら、職員のIDメダルを投入する仕掛けらしい。道中倒したジュアヴォから奪ったものがあったので、入れてみる。 すると、仏像が稼動して、閉じていた道が開いた。 「……なるほどな、だいたいわかったぜ」 邸内を走り回ってメダルを集め、再びロビーに戻ってきた二人。仏像にメダルを入れると、通信室のドアが開いた。 そこはこの施設のデータ管理室もかねているらしく、半年間の実験データもそろっていた。運良く、通信端末も見つけた。 ジェイクおよびシェリーに対する様々な実験のデータを回収しつつ、上司に連絡を取るシェリー。 「今、中国にいるって。助かったわ。行きましょ、もう用はないわ」 シェリーが言い、ジェイクも同意した。 さきほどは後回しにした玄関を、今度こそ遠慮なく通ろうと、近づいた、そのとき。 轟音を立てて、戦車が突っ込んできた。戦車といい、豪邸を贅沢に破壊する行為といい、資金には困っていないようだ。 遠慮なく主砲をぶっぱなしてくる戦車。当然太刀打ちできないので、施設の奥へと逆戻りするしかない二人。 ひたすら奥まで逃げたところで、人工庭園に出た。ジュアヴォの待ち伏せに遭い、さらに戦車も追いついてきた。 なんとか逃げる方法はないかと、ジェイクは自慢のアクロバットで、普通は届かない離れたビルへと飛び移る。 そこには真っ赤なスポーツカーと、真っ赤なスーパーバイクがあった。ジェイクは迷わずバイクを選び、エンジンをふかす。 シェリーの元へと向かい、後ろに乗せると、ここでもまた天才的な運転技術を披露して、戦車を振り切って脱出した。 二人を乗せて、バイクは走る。目指すは、シェリーの上司との合流、そして国外脱出だ。
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キャラの基本情報 外伝物語・火を追う蛾に登場。姫子が隊長の灰蛾部隊の隊員。
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危険な旅路 夜光大蛾 レベル:数 24-26:1-3 構成 名前 種類 レベル 初期付与 使用技 夜光大蛾 24-26 備考 ドロップアイテム 情報募集中 名前 コメント
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危険な旅路 夜光大蛾 レベル:数 24-26:1-3 構成 名前 種類 レベル 初期付与 使用技 夜光大蛾 24-26 備考 ドロップアイテム 情報募集中 名前 コメント